フェリー「芸予型」まもなく引退 懐かしの航路でクルーズに110人

福家司
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 広島、愛媛両県の芸予諸島を巡ってきたフェリー「第八おおしま」(253トン)の引退を前に、かつての航路をたどるチャータークルーズがあった。船のファンや地元住民ら約110人が参加し、この船が海上交通の主役だった時代を懐かしんでいた。

 第八おおしまは1990年に「第五愛媛」として建造。瀬戸内しまなみ海道の開通前に多く建造された、船の前側からしか車両が出入りできないフェリーの基本形「芸予型」のうち、この海域では最後の1隻という。現在は車を運搬するチャーター船などとして運航されており、来年1月に引退を予定する。

 5日朝、船は今治港(愛媛県今治市)を出港し、定期航路として結んでいた因島・土生港(広島県尾道市)までを五つの島に寄港しながら往復。各島で15~30分停泊し、参加者は下船して船の写真を撮影した。甲板で潮風に吹かれながら造船所にいる巨大な船やフェリーが橋をくぐる様子や、定期航路の快速船など多彩な展望を楽しんだ。船内には船の設計図やかつての今治・土生航路の時刻表も展示され、佐島に停泊中はブリッジも見学できた。

 途中の伯方島・木浦港(今治市)で乗下船した福羅久美さん(86)は「病院、買い物、遊び、今治に出るのはいつも船だった。今から思うと不便だが、当時は当たり前。子どもを連れてよく乗ったのが懐かしい」と話した。

 フェリーに詳しい福岡県苅田町の船舶無線通信士、丸山匠さん(31)は「芸予型のフェリーは瀬戸内海を象徴するエリア・芸予諸島の風景と切っても切れない存在だと思う」と話した。

 船の建造直後に船員として乗船した経験もある越智久博船長(59)は「建造当時は舵(かじ)も利きやすく、よい船だと思った。もう旅客を乗せることもないと思うとさびしい」としみじみ話した。(福家司)

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