活況の中国SF、国が後押しする「蜜月期」 ファンの聖地で世界大会

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成都=金順姫

 81回を数える世界SF大会(ワールドコン)が10月18~22日、中国四川省成都市で開かれた。世界的なブームを巻き起こした「三体」をはじめとする中国SFの活況を背景に、中国では初の開催となった。学生や子どもの来場も目立ち、国が後押しする中国SFの人気と勢いを感じさせる大会だった。

 「中国のSF文学は改革開放以降に高速の発展を遂げ、周縁の存在から大量の受け手を持つに至った。英語の世界や日本でも多くの読者を得て、世界SF大会が成都で開かれることになった」

 大会の名誉ゲストで、「三体」の著者として知られる劉慈欣さんは、初日に開かれた記者会見でこう述べた。

 大会がアジアで開かれるのは、2007年の横浜に次いで2回目。成都は老舗雑誌として知られる「科幻世界」の編集部が置かれ、多くのSF作家を生んできたファンにとっての「聖地」だ。

 会場となったザハ・ハディド・アーキテクツ設計による成都SF館は、大会にあわせて建てられた。各国の作家やファンらが集まり、「パンダの火星への移住」「ChatGPT(チャットGPT)はSFの創作をどう変えるか」といったテーマのパネルディスカッションも開かれた。「日本でSFのネット出版はどのように行われているか」「国境を越えるSF魂 互いを映し出す中日SF」などの日本関連のテーマの議論もあった。

 「中国で初めての大会を誇りに思う。現場に来て、とても感動しています」。山東省済南市から大会を見るためにやってきた大学生、房さん(20)は話した。中学生の頃からSFを読み始め、「三体」など劉さんの作品のファン。「ロマンがある」のが中国SFの魅力だと考えている。

 中国語でSFは「科幻」と表記する。科学幻想の略だ。科学技術の発展に資するとみなされ、国が教育にも取り入れてきた。

 「中国ではSFが『役立つ』という認識がある。中国文化を広める上で世界に通じる手法の一つだと考えられており、政府が支援している」と「三体」の邦訳の監修も務めた作家の立原透耶さんは説明する。また、国が経済的に発展する段階でSFが盛んになる傾向は、世界的にみられるという。

ヒューゴー賞の中国人受賞者「いつも星空を見上げている」

 大会ではSF界の最高峰の賞…

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    吉岡桂子
    (朝日新聞記者=中国など国際関係)
    2023年11月10日19時29分 投稿
    【視点】

    記事にあるように、会場となった四川省の省都・成都は「老舗雑誌として知られる「科幻世界」の編集部が置かれ、多くのSF作家を生んできたファンにとっての「聖地」です。三国志やパンダ、料理で知られる四川省ですが、その省都・成都は「中国ヒップホップの

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