AI記事の「ただ乗り」防ぐには? 著作権で対応は限界、識者が指摘
生成AIの急速な普及により、出典を明記しないまま報道コンテンツが利用される懸念が増しています。日本新聞協会は10月30日、こうした記事への「フリーライド(タダ乗り)」がメディアの弱体化や誤情報の拡散を通じて民主主義を脅かすとして、著作権法の改正を求める考えを発表しました。
著作権法でフリーライドを防ぐことはできるのでしょうか。早稲田大学の上野達弘教授(知的財産法)は法改正での対応には限界があると話します。
――ウェブメディアが生成AI(人工知能)を使って作った記事が他の報道機関の記事を盗用していたことが8月、発覚しました。著作権法上、どのような問題がありますか。
AIと著作権についての議論は、他人の著作物をAIの学習に使って良いかという「学習段階」と、AIを利用して作品を生成することが既存の著作物の著作権侵害に当たるかという「生成段階」の二つがあります。
今回のウェブメディア記事については分かりませんが、もし「生成段階」で学習元の記事と事実のみならず創作的な文章表現において共通する文章が出力されていた場合は、著作権の侵害に当たるので公開をやめさせることができます。人が書いた記事と同じです。
一方、AIの「学習段階」においては原則、著作権者の許諾は必要ないとされています。
無断で記事学習、問題ない?
――なぜですか。生成AIの発展のためなのでしょうか。
私の見方は少し違います。たしかに、著作権法では、権利者の利益と文化発展のバランスを取って権利を制限する場合はあります。たとえば、教育目的での利用の場合などです。
しかし、2009年に導入さ…
- 小早川遥平
- 上海支局長
- 専門・関心分野
- 中国社会、平和、人権