旧ジャニーズ事務所問題、検証番組で見えてこない実名、顔、覚悟

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テレビ時評 斉藤潤一

 テレビのインタビューで、顔にボカシやモザイクがかかった「顔なし」映像や、名前が仮名(かめい)、肩書だけの「匿名」をよく見かける。これはプライバシー保護の観点から必要な措置だが、本来、事実の正確性が求められるテレビ報道においては「顔出し」「実名」が基本原則である。

 先月21日にフジテレビが旧ジャニーズ事務所の性加害問題に関する検証番組を放送した。社員ら77人に調査をして「男性の性被害に対する感度が低かった」「特別視が性加害を見逃した」などの証言を紹介し、ジャニーズ事務所に対する忖度(そんたく)を認めた。同じような検証はNHK、日本テレビ、TBS、テレビ東京でも放送していて、短期間に自己検証した点は評価出来る。しかしどの局もキャスター、幹部らによるスタジオでの説明や元局員のインタビューはあったものの、現場で旧ジャニーズ事務所と向き合ってきた現役局員の証言はスタジオのパネルやテロップの文字で紹介するだけ。名前も肩書だった。テレビの場合、表情や声は大切な情報だ。「顔出し」と「実名」で証言するからこそ、その人の本心や反省を見極めることが出来る。文字からは人物の本質が見えにくい。

 今回の問題では被害者が勇気…

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