2024年度は生徒受け入れ 特別支援学校の寄宿舎
栃木県教育委員会が栃木(栃木市)、那須(那須塩原市)両特別支援学校の寄宿舎を廃止する計画について、7日の定例会見で阿久沢真理教育長は、2024年度も寄宿舎に児童生徒を受け入れることを明らかにした。廃止の方針に変わりはなく、寄宿舎のあり方に関する検討会の議論が続いているためとした。保護者からは、さらに議論を深めて欲しいとの声が上がっている。
県教委は2021年11月、栃木、那須両特別支援学校の寄宿舎廃止の計画を公表した。これに対して保護者らは署名活動や県議会への陳情を重ねて存続を求めてきた。
22年12月、阿久沢教育長は寄宿舎廃止時期の延期を表明。県教委は学識経験者らによる「特別支援教育の在り方に関する検討会」を設置して今年8月から4回開催し、寄宿舎の現地視察などを行ってきた。
阿久沢教育長は7日の会見で、これまでの検討会で幅広い意見が出ている点をあげて、今後の検討会でも「これらの意見を踏まえた丁寧な議論が行われるものと考えている」と説明。結論が出ていない中、24年度も寄宿舎への受け入れを決めたという。
検討会は次回、13日に開催される。その後、何回開催されるかは未定だが、県教委は議論の結果を踏まえて寄宿舎廃止について再度検討するという。ただ、廃止方針について「現時点で変更はない」と阿久沢教育長。廃止や延期については年度単位で考えており、「年度の途中で入っている人に出て行ってもらうのは現実的ではない」と語った。
県教委は廃止の理由について、建物の老朽化や、自宅が遠く通学が難しい子どもが減っていると説明している。廃止後はスクールバスの増車や、子どもたちが宿泊学習できる「生活訓練棟」の積極活用、福祉事業所との連携などに取り組む考えだ。
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来年度も寄宿舎に受け入れる方針を県教委が表明したのを受け、栃木特別支援学校の寄宿舎生保護者の筧三枝子さんは、「検討会には今後1年かけて、寄宿舎を利用した児童生徒の保護者全員から意見をしっかり聞いてほしい」と求める。
検討会の透明性の改善も望む。「寄宿舎教育は40年以上かけて積み上げてきた県民の財産です。皆が知るべきです」。先月、筧さんは保護者3人と検討会に招かれたが、「4人に与えられた時間は質疑を含めて20分と短く、寄宿舎廃止後の課題をいくつか指摘したが、公表された概要には盛り込まれなかった」。
また、検討会に対して、定期的に寄宿舎で子どもの成長を見てほしいと要望する。検討会は先月、同校寄宿舎生の生活を1時間視察した。「1時間で何がわかるか疑問です」。検討会開催の案内が約1週間前である点も「仕事などを調整できず、せめて1カ月前に案内してほしい」と話す。
那須特別支援学校保護者会代表の鈴木美由紀さんは、「県教委の検討会に寄宿舎の専門知識をもつ委員を入れるべきです」と指摘する。検討会に加わって初めて寄宿舎を見たという委員らが寄宿舎廃止後の何を判断できるのかと疑問を感じている。
同校寄宿舎は福島県境や茨城県境など自宅が遠い子を受け入れてきた。鈴木さんは「寄宿舎による通学保障の必要性はなくならない」。県教委は廃止後にスクールバスを想定し、乗車時間は1時間以内としているが、「検討会委員は自閉症スペクトラムの子の世界を体験できる格好でバスに1時間乗った上で議論してほしい」と訴える。