原発被災地の村議選が定数割れ 無投票選挙の理由は「穏やかに…」

岡本進
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 福島県川内村議選(定数10)が7日告示された。立候補したのは、いずれも無所属の現職8人と前職1人の計9人にとどまり、定数割れでの無投票当選が決まった。村選挙管理委員会によると、村議選の定数割れは戦後初めてで、無投票は1991年以来32年ぶり。6日現在の選挙人名簿登録者数は2102人。

 県選管によると、補欠選挙を除く県内の市町村議選で定数割れになったのは、63年以降では2017年の楢葉町議選、19年の国見町議選がある。公職選挙法では市町村議員選挙の場合、欠員が定数の6分の1を超える時は再選挙を実施しなければならないと決められており、今回の川内村議選は6分の1未満のため、欠員1のまま任期に入る。ただ、次の選挙に向け、定数削減の論議が避けられない見通しだ。

 議員のなり手不足は、原発事故による「全村避難」を経て村の高齢化が進んだことが背景にあるとみられる。原発事故前に33・5%だった65歳以上の高齢者人口は46・9%(9月現在)に達する。当選者も70代が6人、60代が3人で、平均年齢は71・2歳。現職議員の1人は「そもそも村で暮らす若手が少な過ぎる」と嘆く。

 立候補を届け出た現職が8人となったのは、2期目の女性議員(当時80)が7月に交通事故で亡くなり、4期16年務めたベテラン議員も今期で引退するからだ。その松本勝夫さん(83)は取材に「前回の選挙で退くつもりだったが、地域の人から『もう1期だけ』と懇願され、今回も前夜まで『続投を』と説得された。『年齢的にさすがに無理だ』と断った」と明かす。

 ただ、前回は109票で9位当選だった松本さんはこうも話した。「民主主義を考えれば、選挙戦が望ましいのは当然だ。だが、小さな自治体で選挙となると、親戚をも巻き込む熾烈(しれつ)な争いになる。今回の川内村に限らず、過疎地で無投票選挙が増えているのは、地域が衰退するなか、せめて穏やかに暮らしたいという気持ちの表れだと思う」(岡本進)

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