「留守番は虐待」条例案で露呈した男性政治の貧困 三浦まりさん

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聞き手 編集委員・豊秀一

 子どもだけの留守番や外遊びなどを禁じる埼玉県虐待禁止条例改正案に批判が集まり、県議会本会議で撤回されるという事態が起きました。この問題から何を読み取るべきなのか。政治学者の三浦まりさんはそこに、「政治の貧困がある」と言います。

 ――一連の動きを報道でご覧になり、どう受け止められましたか。

 「子育てのリアリティーからあまりに乖離(かいり)した発想だなと、思いました」

 ――子どもの安全を守ることは重要ではないでしょうか。

 「もちろん、すごく大切です。車の中に置き去りにされた子どもが熱中症で亡くなってしまうとか、虐待の事件も相次ぎ、対策は必要です。一方で、子どもが自由に遊ぶということも重要なのです。安全と自由はしばしば対立することがあります。安全を重視するあまり、大人が囲っておけば安全だという条例案のような発想は、子どもたちが自由な環境の中で健全な人間関係を学び、遊びながら身体能力を伸ばしていく子どもの成長という点から、あまりにバランスを欠いたものだと思います」

 「『孤育て』という言葉があります。周囲から孤立し、母親が育児の責任をひとりで背負い込み、過度な負担がかかる。それが子どもへの虐待につながるというケースもあるようです。家庭イコール安全、という想定自体も問い直されてしかるべきなのです。ところが、条例案は『子どもを守る』という一点から、親を追い詰めていく構図になっています」

自民党県議団が世論からずれてしまった理由

 「しかも、条例案からすけて…

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