報道のコスト、誰が負担? 「ただ乗り」で取材者がいなくなる懸念
生成AIの進化によって、報道コンテンツへの「フリーライド(ただ乗り)」に拍車がかかっていると指摘されます。
ウェブメディアが生成AIを使って書いた記事が他の報道機関の記事からの盗用だったとして取り消されたケースもあります。
国民の知る権利を損ねないために、何が必要なのでしょうか。プラットフォーマーと憲法や著作権法との関係に詳しい、神戸大の木下昌彦教授(憲法)に聞きました。
――生成AIの進化により、大手検索サイトで検索結果の要約が表示されるようになったり、まとめサイトが作りやすくなったりし、ニュース記事への「フリーライド」が進んでいます。
人の手で文章を要約し、整理し、表現を置き換えるのには、時間と手間がかかります。それが、生成AIによって簡単に、速く、優れた形でできるようになってしまいました。
これに対する対応は、旧来の著作権法の枠組みでは難しいでしょう。
――というと?
現在の著作権法上では、AIを使っていてもいなくても、「表現」が類似していれば著作権侵害になりえますが、元の「アイデア」の提供については、保護の対象外です。この「表現とアイデアの二分論」自体が、生成AIが浸透する時代には合わなくなってきています。
「表現」を変えること自体に時間や費用がかかり、制約がある時代には、それによって結果的に「アイデア」も保護されていました。例えば、新聞記事を別の表現に置き換えて販売しようとしても、それには時間がかかり、手間とスキルも必要で、表現を置き換えている間にもう、そのニュースは古くなり、その記事が表現している「アイデア」を伝達する意義は失われます。しかし、生成AIによって、このタイムラグがなくなってしまいました。
業界団体からは、(生成AIの学習に報道コンテンツを著作権者の許諾を得ずに収集することを原則として認める)「著作権法30条の4」の改正を望む声が出ていますが、私は、それで何とかなる問題ではないと思っています。
では、どうすれば? 仕組みを提案
――では、抜本的な法改正が必要ですか。
長期的には必要でしょうが、人間がたくさん本を読んだり論文を書いたり要約したりすることが、AIに置き換わって何が問題かということにはまだ答えが出せていません。
AIを使った取り込みやアウトプットへの規制は憲法上の表現の自由の侵害にあたりかねないので、慎重に考える必要があると思います。
AIによる学習を拒否するメディアもありますが、正確で重要な情報を集めるメディアが軒並み拒否をしたらアウトプットはゆがみ、プラットフォームなどに正確な情報が現れず、社会的にも問題が生まれそうです。ですから、理想論としては、制限のない「自由利用」ができ、それによってきちんとした情報が流されるべきです。
――しかし、自由に任せると……。
どうしても、問題が起きます…