射殺されたクマの胃にあったのは 出没なくなった地区から見える課題
平子義紀 佐藤美千代
脇腹の骨は浮き出て、ガリガリにやせていた。
「人里へ食料を探しに来たんだろう」
納屋の前で射殺されたオスの成獣の体を見た、富山県自然博物園の赤座久明さん(70)は直感した。皮下を調べると、案の定、ほとんど脂肪がなかった。
10月23日に富山市安養寺で発生したクマ被害の現場でのことだ。70代の男性の顔や脚に全治1カ月のけがを負わせ、納屋に隠れていた。
その6日前には、2・5キロ離れた民家の敷地で、70代の女性がクマに襲われて死亡した。射殺された個体によるものかどうかは分からない。
女性と夫の家の庭には、たわわに実った柿の木が残されていた。周囲の家々でもそうだった。高齢の夫妻を知る住民は記者に、「実を取ろうにも手が回らなかったのでは」と語った。
今年の富山県では、ブナやミズナラなどのドングリ類が不作で、クマが里に出やすいとされる。すでに県内の人身被害は計6件で1人が死亡、6人がけがを負った。10月の出没件数は昨年の11倍にもなった。
胃の中に詰まっていたのは
野生鳥獣共生管理員である赤…