「恐怖の中に置かれている」被差別部落住民、投稿削除の仮処分を申請
全国の被差別部落の地名を巡る記事や写真などが掲載されたウェブサイトで、憲法が保障する人格権などを侵害されているとして、被差別部落に住む70代の男性が6日、投稿の削除を求める仮処分を大阪地裁に申し立てた。投稿は社会に根深く残る部落差別を助長・固定化させるとし、男性側は「差別されない権利の侵害」とも主張する。
申立書などによると、このサイトは川崎市の出版社の代表が運営。部落の地名を列挙した上で、代表が自ら撮影した地域の写真が掲載され、男性の自宅も写っているという。男性側は「暮らす地域が部落だと全世界にさらされ、不当な取り扱いや社会的排除といった差別を受けるかもしれない恐怖の中に置かれている」と訴える。
部落差別を巡っては、1970年代、被差別部落の地名などが掲載された図書が企業などに販売され、身元調査などに用いられる問題があった。法務省が回収・焼却する対応をとったが、2000年代に電子版が出回っていることが確認されるなど、完全な排除には至らなかった。
この出版社は16年、部落の地名や世帯数などを一覧にした戦前の報告書「全国部落調査」の復刻出版を告知し、ウェブサイトに地名リストを掲載。部落解放同盟と被差別部落出身者が差し止めなどを求めた訴訟で、東京高裁は今年6月、原告側の「差別されない権利」を認め、出版禁止や損害賠償などを命じた。
今月6日に会見した男性は「部落差別は今も残っている。その差別を拡散・拡大していく行為を許すことはできない」と話した。
一方、出版社代表は「当該地区が同和地区であることは明らかで、削除する理由はない」とのコメントを出した。(森下裕介)
写真や動画「モグラたたきのようだ」
川崎市の出版社のサイトには、仮処分を申し立てた男性の自宅を含んだ写真が現れる。有料動画も公開されている。男性は実名もさらされた。
1960年代後半。高校3年…