第1回洋上にみえた中国海軍の艦 空母化しつつある「いずも」で見た神経戦

有料記事いずも 空母化する護衛艦のいま

編集委員・土居貴輝
【動画】南シナ海。グレーゾーンの海で続く日中の「神経戦」=土居貴輝撮影
[PR]

 護衛艦いずも「レーダー上の(目標)と同じものかどうか分かりますか?」

 艦載ヘリコプター「確認中です」

 ヘリ「中国(海軍の艦艇が)が2隻いるってことか? いや、この漁船ではないな」

 ヘリ「レーダーのって、あっちに見える艦ではないか?」

 いずも「写真、撮れますか」

 ヘリ「撮れます。こちらで(ヘリの)搭乗員が撮ります」

 8月22日午前。南シナ海フィリピンのパラワン島西方の公海上を航行していた海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」から、艦載ヘリコプターSH60Kが飛行訓練のため飛びたった。記者はこれに同乗を許された。

10分ほど交信、操縦席から声

 甲板から発艦して15分ほど飛ぶと、洋上に1隻の艦艇が見えてきた。

 操縦席のパイロットは、いずも艦内のCIC(戦闘指揮所)と、無線でやりとりを続けた。

 声のトーンは普通だが、操縦席のパイロット、CICの乗員ともにかなり早口だ。「一言も聞き漏らすまい」と力が入り、カメラとペンを持った両手は汗ばんだ。ヘリ機内から見ると、艦の前部に艦砲の砲身やミサイルの垂直発射装置(VLS)も確認できた。明らかに商船ではない。

 ヘリは眼下の艦艇と約9キロの距離まで慎重に近づきながら周回した。10分ほど交信が続いた後、操縦席から「はい、(中国海軍の)ジャンカイね」と声が上がった。

 撮影が許可された。ヘリ後部のキャビンドアを開けてもらい、望遠レンズで撮ると、艦番号は「570」だった。中国海軍所属のジャンカイⅡ級フリゲート艦だ。対艦、対空ミサイルを備え、南西諸島など日本の周辺でも確認されているタイプだ。

 ここは、中国が歴史的な経緯を根拠に南シナ海で自国の権利が及ぶと主張する「9段線」と呼ばれる境界付近だ。2010年代以降、埋め立てて造った人工島に滑走路やレーダー施設を建設するなど、実効支配と軍事拠点化を進めるスプラトリー(南沙)諸島に近い。

事実上の「空母化」が進む海上自衛隊最大の護衛艦いずも。今夏、インド太平洋の海域を3カ月半にわたって航行しました。この航海に同乗して見えた、いずもの現状や、海洋進出を強める中国とせめぎ合う安全保障の「最前線」を報告します。

「いずも」南シナ海に入る意味

 中国は9段線内で自国の「管轄権」を主張しており、フィリピン、ベトナムなどとの間で激しい確執が続いている。

 中国による「一方的な、力に…

この記事は有料記事です。残り2924文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません