今年も大熊でキウイを直売 原発事故で避難 父の遺志を継いだ5代目

滝口信之
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 今年も福島県大熊町特産のキウイが帰ってくる。約100年間、町内でナシやキウイを栽培していた果樹園「フルーツガーデン関本」が3日、町内で1日だけ復活する。園は東日本大震災による原発事故で、避難を余儀なくされた。今回も避難先の千葉県で収穫されたキウイや加工品を販売する。5代目の関本元樹さん(23)は「多くの人と、お目にかかれるのを楽しみにしています」と話す。

 同園は1912(明治45)年に大熊町で開園し、ナシやキウイの栽培を続けてきたが、原発事故の影響で休園に。その後、得意先から「ナシを待っています」と後押しもあり、2012年末に関本さんの父信行さんが千葉県香取市で園を再開した。

 ナシやキウイの生産が軌道に乗った17年8月、信行さんが55歳で亡くなった。その後、ナシやキウイの木の大部分を伐採したが、関本さんの祖父が趣味でキウイの栽培を続けていた。

 「どこで作っても俺が作れば大熊産だ」と言っていた信行さんの遺志を継ごうと、関本さんは知り合いの農家を訪ねたり、祖父の手伝いをしたりしていくうちに就農を決断した。

 大学を卒業した昨春から本格的にキウイの栽培を始めた。昨年11月には、震災後初めて大熊町の自宅があった場所で1日限定の直売会を開催。約400キロを準備したが、約3時間で完売。買いに来た顔なじみからは「お帰り」「よく販売してくれた」と声を掛けられた。涙を流してくれる人もおり、「来年もやろう」と今年の開催を決めた。

 今年は猛暑で雨が少なく、果肉が変色する影響もあったが、味は昨年と変わらないという。大熊町時代も販売していたキウイのジャムや、初めて挑戦したドライフルーツ、キウイを使ったジュースも販売する。

 ナシは早ければ26年から販売を始める。10月からは香取市でキウイの直売も始めている。

 大熊町での直売は3日正午から午後4時まで。関本さんは「直売所だけではなく、この機会に大熊町が復興していく姿もみてほしい」と呼びかける。(滝口信之)

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