謎の料理「すっぷく」広めたい 大槌高への留学生が挑む「証し」研究

東野真和

 三陸沿岸の岩手県大槌町にだけ伝わる「すっぷく」という郷土料理がある。埼玉県出身者で、それを知った高校生が、「みんなで食べる会」を開いた。企画して気づいたことがある。郷土料理は、地元の人の生きた証し――。

 埼玉県久喜市から昨年、岩手県立大槌高校に「国内留学」した2年生の栗原花音さん(16)は、地域の人たちと知り合いたかった。

 運動会や盆踊りなどに参加していたが、もっと仲良くなりたい。「趣味の料理作りを通じて、もっと交流を広げられないか」と、下宿先の民宿のおかみさんに相談した。教えられたのが、「すっぷく」だった。

 すっぷくは、謎の料理だ。片栗粉でとろみをつけただし汁に細麺のうどんを入れ、野菜、豆麩(ふ)などを加えて、甘辛く味を付ける。

 お盆や法事で出される精進料理らしいが、大槌町以外にはない。なぜ大槌だけなのか、なぜすっぷくというのかはわからない。それどころか、町で育った同級生らに聞いても、食べたことがある人は少なかった。

 興味を持った栗原さんは、町内ですっぷくを知る人に聞いて回った。地区によって入れる具材や味が違うことがわかった。山間部の小鎚地区では藤原智佳子さんに作り方を聞いた。昨年亡くなった母のテエ子さんが、郷土料理の継承活動をしていたとも聞き、その遺志を継ぎたいと思った。

 栗原さんは、地区のイベントに何度も参加していた安渡町内会に相談し、22日に食事会が実現した。町公民館安渡分館の調理室を借り、住民や同級生、下級生に協力してもらって作った。各地区で教わった作り方を自分なりにアレンジした。しいたけやにんじんを入れ、甘めに味を付けた。

 100人分作って振る舞うと次々と住民が来て20人分作り足した。「東日本大震災の前以来だ」「うちのは別の具材を入れる」などと会話が弾んだ。食べに来る交通手段のないお年寄りには、配達して喜ばれた。

 栗原さんは、代々伝わってきた郷土料理を知ることは、地元の人たちが生きてきた証しを知ることだと理解した。今後は高校の「探究」授業の一環として研究を進める。「学校で食べる会を開いたり、町内で出してくれる店を広げたりしたい」と目標を掲げる。(東野真和)…

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