役所行く時間ない、他者の目怖い…社会福祉士がみてきた制度利用の壁
Re:Ron連載「知らないのは罪ですかー申請主義の壁ー」第3回
「夜の22時ごろに帰ってきて、朝7時半には家を出ます」
数年前、私はある自治体で、子育て世帯を訪問し、新たにスタートした支援制度の利用を促す活動をしていました。そのとき何回訪ねても応答がない世帯がありました。世帯主の母親に会うことができたのは4回目の訪問。朝の7時30分のことでした。
非常識な時間だとわかりながらもチャイムを押し、市役所からの訪問であると小声で告げた私に、玄関口に出てきた女性はいぶかしげな目線を向け、疲れた顔で言いました。「私は仕事を二つしていて、朝晩働いています。夜の22時ごろに帰ってきて、朝7時半には家を出るんです。役所に手続きに行く時間なんてないんです」。ひとりで2人のお子さんを育てながら、ダブルワークで生活費を稼いでいたのです。
この女性のようなダブルワークや、ダブルケア(子育てと介護)などの理由で、日々の生活に忙殺されている人たちがいます。目の前の生活に追われて余裕がないときこそ、社会保障制度が力になるかもしれません。ですが、経済的な手立てや家族のケアをサポートする手立てを調べる時間がなければ、利用を検討することさえできません。
そもそも、日中に役所にいく時間をつくることさえ大変な人はどうすればいいのでしょうか。
申請プロセスからの排除
社会保障制度を名実ともにセ…