ギョーザ盗んだ男逮捕、自宅からは遺体が…誰も気づかなかった貧しさ

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伊藤未来 池田良
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 福岡市の中心部にほど近く、住宅が立ち並ぶ一角。

 九州随一の繁華街・天神まで歩いていけるほどの距離にあるマンションで、57歳の男は80代の母親と2人で暮らしていた。

 定職には就いていなかった。

 生活資金の柱は、母親の年金。

 時折、離れた場所で暮らす兄から援助してもらっていたが、その兄が昨年末、亡くなった。

 日々のやりくりに行き詰まり、相談するあてもない。

 「母も私も、おなかがすいていた」

 男が目をつけたのが、ギョーザの無人販売店だった。

 客がいない深夜に、店に忍び込む。

 金を払ったふりをして、冷凍ギョーザを盗んだ。

 二つの店から盗んでいたが、そのうちの一つは男の自宅から300メートルほど離れた場所にある。

 店によると、当初は犯行時に手袋をしていたが、そのうちそれもなくなった。

 福岡県警は被害店に張り込み、5月12日未明、窃盗容疑で現行犯逮捕した。

 検察によると、男の所持金は当時33円だったという。

 そこから、事態は思わぬ方向に進むことになる。

男の暮らしで起きていた異常事態に、周囲は誰も気づいていませんでした。いったい、何が起きていたのか。思わぬ事件の背景を追ったほか、事件を防ぐためにどうすればいいのか、専門家に聞きました。

椅子にもたれ掛かるように亡くなった遺体、男が語った家族の関係

 逮捕の2日後だ…

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    磯野真穂
    (東京工業大学教授=応用人類学)
    2023年11月5日14時0分 投稿
    【視点】

    「家族」というのは、身体を含む面倒を密に見合う共同体として一般的に認識されています。だから、子どもが年老いた親の面倒をみることは当然とされる一方で、毎日顔を合わせる家族でない隣人は面倒をみる義務を負いません。負わなくても責められることはあり

    …続きを読む
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    田中俊之
    (大妻女子大学准教授 男性学研究者)
    2023年11月5日15時32分 投稿
    【視点】

    「よっ友」という若者言葉があります。大学の授業などで数回顔を合わせてしまったがために、挨拶だけはしなければならない友達という意味です。「よっ友」とエレベータで一緒になると会話がなくて困るといったように否定的な使われ方をしています。若者は悪い

    …続きを読む