インフルエンサー、地方路線に来たれ その名は「ローカルダイバー」

松永和彦
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 鉄道を利用してくれる人をどうにか増やせないか。そのために地域に人を呼び込む手立てはないか――。

 自然豊かな紀伊半島の沿岸部を走る紀勢線の、和歌山から新宮までの区間は「きのくに線」として親しまれてきた。だが現在、JR西日本が抱える赤字路線の一つだ。

 今月、JR西はある募集をはじめた。

 「ローカルダイバー」。地域(Local)と、飛び込むや潜り込む(dive)を組み合わせた造語だ。

 狙いは、ネット上で影響力を持つインフルエンサーに、和歌山県南部を訪れてもらい、魅力を探索して情報発信してもらうことだ。地元住民からすれば当然のことも魅力になるかもしれない。そんな発信に期待を寄せる。

 JR西和歌山支社が発案した。同支社は昨年10月、地域との関わりを探る部署「地域共生室」を設けている。担当課長の御堂直樹さん(47)は「ローカルダイバーの皆さんに地域に潜り込んでもらい、SNSなどを通じて全国や世界に和歌山の魅力を発信してもらう。県に人を呼び込み、そのうちの何割かが鉄道を利用してもらえれば」と思いを語った。

 この企画には県南部の自治体の協力を得た。田辺市、上富田町、すさみ町、古座川町、那智勝浦町の5市町。御堂さんらが掛け合った。

 ローカルダイバーには、自治体側が選んだ炭焼き職人や農事組合法人、食堂の経営者ら10の事業者と協力して、課題の解決や情報の発信を手がけてもらう。

 活動期間は来年1月からの1年間で、5市町のエリアを定期的に訪問してもらう。長期滞在などの相談も歓迎する。

 11月12日まで応募を受け付ける。18歳以上(高校生不可)を10人募る。謝礼はないが、旅費や宿代などの活動費を1カ月で2万円分を上限に、電車賃や駅構内店舗などで利用できるJR西グループの共通ポイントで支払われる。

 御堂さんは「我々にとってもやったことがないチャレンジ。今後は県内のほかの自治体にも広げていきたい」と意気込んだ。

 1年後にはローカルダイバーの成果を冊子にまとめ、JR西管内の駅に置くことなどを予定しているという。

 詳細や申し込みは専用のウェブページ(https://www.westjr.co.jp/company/action/region/local_diver/別ウインドウで開きます)で。問い合わせはJR西和歌山支社(073・425・6094)へ。

JR西日本は昨年に赤字ローカル線を初公表

    ◇

 JR西は昨年4月、2019年度の輸送密度(1キロあたりの1日平均利用者数)が2千人未満の路線の収支を初公表。昨年11月の公表では、きのくに線の白浜―新宮間について、19~21年度平均の収支は29億5千万円の赤字で、21年度の輸送密度は731人だった。(松永和彦)

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