美祢線復旧へ山口県が河川改修計画 JR西に伝達へ

向井光真
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 大雨での被災で運休が続くJR美祢線の復旧をめぐり、山口県の村岡嗣政知事は24日、沿線を流れる厚狭川について川幅を広げ、堤防を高くするなどの改修を美祢市内で実施する計画を明らかにした。JR西日本から川の防災強度の改善を求められたことを受けた対応だ。村岡知事は26日、JR西日本に改修計画を伝え、美祢線の早期復旧をあらためて要望する。

 6月30日からの大雨で厚狭川が増水し、第6厚狭川橋梁(きょうりょう)(美祢市大嶺町西分)の橋と線路が崩落。美祢線は全線運休が続いている。

 県河川課によると、県は厚狭川の河川管理者として再度の災害を防ぐため、美祢市内の流域の一部で川幅の拡張、川底の掘り下げ、堤防のかさ上げの3工法を組み合わせて大規模な改修を実施する。

 6月末と同レベルの雨量になった場合でも、川から越水しないようにする。現段階の計画では、線路の付け替えは必要としないという。同課は「国の補正予算などを活用し、できるだけ早期に着手したい」という。

 村岡知事は24日の会見で「河川改修計画を具体的にJRに示し、我々としては早期の復旧の方針決定を行って頂くことを求めたい」と述べた。26日にJR西日本広島支社を訪れ、改修の計画や改修によって防災強度が増す橋梁の箇所などを具体的に伝える考えだ。

 厚狭川の改修は、JR西が県に要請していたものだ。広岡研二広島支社長の9月19日の記者会見。美祢線の復旧の考えを問われる中で、2010年にも豪雨で厚狭川にかかる美祢線の線路が流失したことを指摘し、「直しても同じ被災が起きる可能性がある。県は厚狭川全体の河川改修を検討する必要がある」と対策を県に求めていた。

 村岡知事の反応は早かった。6日後の県議会で、厚狭川の「抜本的な改修」を行い、地域全体で洪水に備える「流域治水」を進める方針を表明した。

 ただ、JR側は河川改修を条件に路線の復旧を約束したわけではない。

 広岡支社長は県に河川改修を求めた会見で、「県が(河川の)防災強度を上げると言った場合、復旧することになるのか」と問われたが、「河川の防災強度を上げていくには時間がかかる。並行して美祢線の役割や、将来に向けてもその役割を果たしていけるのかを議論することは可能だ」などと述べ、復旧の可否について言及を避けた。(向井光真)

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 JR美祢線を通じた街づくりを考える「駅deカタルin美祢」と題したワークショップが22日、山口県美祢市のJR於福駅舎内の於福地域交流ステーションであった。山口大のサークル「公共交通利用促進学生会議」が主催。学生らと沿線の美祢、長門市に住む9~87歳の計25人が参加した。

 冒頭、吉本興業所属で「美祢市住みます芸人」として知られる、コンビの「快盗スズメ」(白川誠さん、関和紀さん)とウッチィさんが美祢線や美祢市の歴史を紹介。その後、参加者は4班に分かれて、美祢線の良い点と悪い点、地元にほしい施設などを話し合い、美祢の魅力向上策をまとめた。

 美祢線について「(被災後に運行している)代行バスは時間が遅れがちだが、列車は時間が正確」「鉄道は全国にアクセスできる安心感がある」といった意見が上がった一方、「便数が少なく、待ち時間が長い」「駅が市内の観光地から遠い」「ICカードが使えない」「災害に弱い」などの課題点が指摘された。

 美祢線を活用して街の魅力を向上させる案として、「列車の貸し切りイベントを開催する」「列車内に図書館を作る」「駅舎にキッチンや、筋トレができるジムスペースを作る」「地元の名物をゲットできる自動販売機を各駅に置く」などの意見が出された。

 サークル顧問の山口大大学院創成科学研究科の榊原弘之教授は「美祢線は街や地域、観光地とつながってこそ価値が出る。美祢は人口が少ないが色んな魅力がある街。東西方向に走るバスと、縦方向の美祢線をうまく組み合わせれば移動しやすい形になるのではないか」と講評した。美祢市地域振興課の中島紀子課長は「今日出た意見をJRに届け、市としても頑張っていきたい」と述べた。同研究科修士1年の森竜佑さん(23)は「地域の方々と話し合うことで美祢線の魅力を再発見し、共有できた」と感想を話した。(向井光真)

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