県が台湾で聞き取り「環境上問題なし」 TSMC立地周辺の水質

大貫聡子

 熊本県は、世界的半導体メーカー「台湾積体電路製造(TSMC)」など半導体関連企業が集積する台湾のサイエンスパーク(SP)の水質について、「環境上の問題は特に見られなかった」と発表した。現地機関への聞き取りと、機関が続けているモニタリングのデータから判断したとしている。

 TSMCの県内進出で、環境への影響に関心が高まっている。8月下旬、県の担当者と熊本県立大環境共生学部の教授ら12人が台湾北西部にある新竹SP(1471ヘクタール、617社)と中部SP(1485ヘクタール、236社)を訪問して、SPの管理局などに聞き取った。

 県によると、各工場の排水はSP内の下水処理場で処理されてから河川に放流されていた。処理場放流水は週1回、地下水、河川水は3カ月に1回程度、行政機関がモニタリングしていて、こうした水質データなどを共有してもらった。

 県内にあるTSMCの工場と同規模の工場がある中部の処理場放流水についてみると、台湾の排水基準を満たしていた。日本の基準に照らすと、今回調査した20項目中、ヒ素やフッ素、河川の汚れの度合いを示す化学的酸素要求量の3項目が上回っていたが、それ以外は基準内だった。

 地下水についてはヒ素とマンガンが日本の基準を満たしていないが、SPが原因ではないとの説明を受けたという。こうしたことから、県は「TSMCが原因で深刻な環境問題が発生した事実はなかった」と結論づけた。

 一部の県民からは「台湾ではTSMCが原因で深刻な重金属汚染が発生している」など不安の声が県に寄せられているという。県の担当者が台湾の行政機関に聞き取ったところ、「20年以上前に重金属の環境問題が発生したことがあるが、TSMCが立地するSPが放流する河川ではなかった」といい、「TSMCが原因で深刻な環境問題が発生している事実はない」との説明を受けたという。(大貫聡子)…

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません