県内新幹線駅の停車回数、リニア開業で1.5倍増も可 国交省

田中美保
[PR]

 リニア中央新幹線が大阪まで全線開通した場合、東海道新幹線静岡県内の停車回数を現在の1・5倍に増やすことができる。こうした調査結果を国土交通省が20日、発表した。南アルプスの環境への影響などを懸念して静岡工区の着工を認めていない県に対し、利便性が高まることを強調して理解を促したい考えだ。

 調査によると、東京―大阪間を直行する利用者がリニアを選ぶようになり、東海道新幹線の輸送量は約3割減ると見込んだ。このためダイヤに余裕が生まれ、県内にある六つの新幹線駅に止まる回数を1・5倍に増やせると予測した。

 例えば、静岡駅では現在1日53本、1時間あたり3本(ひかり1本、こだま2本)が停車する。リニア開業後は1日80本、1時間あたり5本に増え、12分に1本の頻度で停車できる。増える列車がのぞみかひかりかといった種別は今回、示されなかった。国交省の担当者は「どの列車をどれだけ止めるかは、JR東海で考えること」と説明。県に構想がある「静岡空港新駅」の可否についても、調査の対象としていない。

 東海道新幹線の停車回数増で、県外からの利用客や県内を新幹線で移動する人が増えるとして、大阪までの開業を見込む2037年から10年間で経済波及効果が1679億円、年間約15万6千人の雇用を生み出すという試算も出した。

 斉藤鉄夫国土交通相は記者会見で「中央新幹線の意義や効果について一層の理解を得たい」と話し、調査結果を県内沿線の関係者に説明する考えも示した。

 これに対し、川勝平太知事は文書で「停車本数が増加する方向性を示したことを歓迎する。ただし、具体的な本数については示されていない。調査結果の実現可能性などをしっかりお聞きしたい」とした。国に対してはこれまで通り、大井川の水資源と南アルプスの保全の両立に向けた支援と、JR東海への指導を求めた。静岡市の難波喬司市長も「JR東海による環境影響評価が適切かつ迅速におこなわれるよう市としても努めたい」とした。

 新幹線駅がある自治体は歓迎モードだ。掛川市の久保田崇市長は「掛川駅の増便は大いに歓迎する。こだまだけでなく、ひかりの停車も実現していただきたい」とコメントを出した。

 JR東海の担当者は、調査結果を参考にして「便利なダイヤを検討していきたい」と話した。(田中美保)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません