マイノリティーの困りごとは? 京都府立清明高校で生徒がスピーチ

滝川直広
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 「私たち、こんなことで困っています」――。外見では判断しにくい特性のある高校生が、学校生活を送るうえで配慮してほしい点を知らせる試みが4日、昼間定時制単位制京都府立清明高校(京都市北区)で開かれた。5人の生徒が自分の「いま」を語った。

 同校初の、生徒が主体の教職員研修会「清明ダイバーシティピッチ」。生徒会と生徒有志、教員らでつくる「清明ワーキンググループ」が主催し、生徒や保護者に呼びかけた結果、80~90人が集まった。

 スピーチしたのは、知的能力に問題はないのに読み書きが非常に困難な学習障害の一種ディスレクシア、感覚過敏、化学物質過敏症(CS)、HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン、とても繊細な人)、性的少数者の計5人。

 ディスレクシアの生徒は活字がどのように見えているか画像で紹介した。少しずれて二重だったり、ひどいときはゆがんで見えたりする。テストでは文章の意味を理解することや解答を書くことに時間がかかり、所定の時間では足りない。点をとれず成績も上がらなかったため、自分に自信をなくしたという。

 また、単語が行をまたいだ場合にスムーズに読めないことも。例えば「行動」という単語のうち、「行」が行の最後にきて「動」が次の行の先頭にきた場合、「行」のあと「動」へ移るはずがまったく別の場所を見てしまうなどと説明した。

 学校への要望として、「受講登録」と「生徒証明書」が手書きのためデジタルで処理できるようにすることを挙げた。「読んでください」「書いてください」と教員にお願いした時は、嫌な顔をせず引き受けてほしいとも呼びかけた。

 CSは合成洗剤や柔軟剤の香料など日用品に使われているさまざまな化学物質によって身体の不調が起きる。同校は今春、校則の服装規定を改定し、私服通学や化粧も認めたが、CSは香水も悪化の原因になる。

 生徒は急性症状として「頭が真っ白になって集中できず、口の粘膜がヒリヒリする」と説明。「授業中は天候、気温にかかわらず窓を開けてほしい」と理解を求めた。

 また、トイレの手洗いせっけんは、CSの生徒が使うトイレは香料や抗菌剤が入っていない無添加のものだが、ほかのトイレはそうではないといい、校内すべてのトイレの手洗いせっけんを無添加のものに変えてほしいと要望した。

 体は男性だが女性寄りに見られたいという性的少数者の生徒は「多様な性のあり方があると認識することが大切。人の数だけ性のあり方があるんじゃないかなと思うようになった」と発言。「ジェンダー違和」「ジェンダー多幸感」という言葉を使い、「『女の子?』って聞かれるのがむっちゃうれしい」「レディースの服を着ているとすごく幸せ」と話した。

 学校生活では多目的トイレを使っているが、男性用、女性用双方のトイレに入るのは清掃のときでも苦しいとして、清掃も多目的トイレを任せてほしいと述べた。男子生徒を「君」、女子生徒を「さん」と呼ぶのはやめ、どちらも「さん」に統一してほしいとも訴えた。

 越野泰徳校長によると、400人弱の全校生徒のうち、約7割が小中学校時代に不登校など長期欠席の経験があるという。「多様性の一つとして、こういう生徒を周りが受け止める考え方が学校の風土になってきた。ここはマイノリティーが集まってマジョリティーがない学校。今後、どうやったら過ごしやすくなるのか考える点で、教員も生徒も同じ方向を向いている」と話している。(滝川直広)

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    武田緑
    (学校DE&Iコンサルタント)
    2023年12月17日14時13分 投稿
    【解説】

    清明高校の山下先生に教えていただいてこの取り組みを知りました。 とても希望のある、本っ当に重要な取り組みで、私自身学校DE&Iを推進する研修や発信をしているにも関わらず、この記事を見落としていて今まで知らなかったことが悔しいぐらいです。

    …続きを読む