52歳で始めたピアノ 「ラ・カンパネラ」奏でるノリ漁師を映画化

野上隆生
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 フランツ・リストの難曲を独学で習得した佐賀市川副町のノリ漁師、徳永義昭さん(63)をモデルにした映画「ら・かんぱねら」が制作されることになり、県内の経済、漁業、農業団体などでつくる「支援する会」の発会式が16日、佐賀市のホテルであった。

 徳永さんはピアニストのフジコ・ヘミングさんの演奏に心を打たれ、52歳のときにピアノを弾き始めた。ノリ養殖のきつい作業のかたわら、1日に10時間練習するなどの努力の結果、プロでも難しいとされるリストの「ラ・カンパネラ」を弾きこなせるようになった。

 こうした1人のノリ漁師の人生にひかれた鈴木一美監督は、3年間徳永さんのもとに通い、シナリオを練り続けた。徳永さんの努力と、それを支えた夫婦愛、家族愛、ノリを育む有明海の美しさ、ノリ養殖の厳しさなどを盛り込みながら描くという。

 会には経済界や農協関係者、そして、徳永さんのノリ漁師仲間の漁協関係者ら100人以上がそろった。参加者を前に、徳永さんが太い指を鍵盤上で鮮やかに弾ませながら「ラ・カンパネラ」を披露。「緊張して綱渡りの演奏でした。俺のような者が映画のモデルになり、うれしく、恥ずかしく、そして光栄だ」と話した。

 支援する会の会長に就任した陣内芳博・県商工会議所連合会会長は「徳永さんは努力と周りの支えで夢を実現した。ぜひ子どもたちに見てほしい。我々も一致団結し、いい映画を作り上げてほしい」と訴えた。

 発会式では、1級船舶免許をもち、映画「硫黄島からの手紙」「半落ち」などに出演した伊原剛志さん(59)が主演に決まったことも報告。徳永さんは「あまりにかっこいいんじゃないか」と感想をもらし、会場の笑いを誘った。伊原さんはさっそくピアノの特訓を始めているという。

 音楽は、広島大水産学科出身で、ノリ養殖の実習経験もあるというジャズサックス奏者の坂田明さんが担当する。

 今月末から始まるノリ養殖の様子を先行撮影。来年秋の公開を目指す。

 支援する会では、映画制作費などの予算総額2億円のうち、1億5千万円を目標に協賛金を募る。問い合わせは、支援する会事務局(0952・97・4781)へ。野上隆生

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