「おひとりさま」の老後、困りごとは? 経費は? 団地で実証実験

土肥修一
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 体が弱って入院や施設への入所を迫られたときに、身の回りのことを手伝ってくれる人が思いつかない。アパートを借りたいのに保証人になってくれる人がいない。独り身で、だれに死後の手続きを頼めばいいのかわからない――。

 身寄りがない「おひとりさま」の高齢者らが直面するさまざまな不安。実際に支援を必要とする困りごとはどんな内容で、サポートにはどれぐらいの経費がかかるのか。高齢化が進む横浜市内の団地で、実証実験が始まることになった。

 10日、「すすき野団地」(横浜市青葉区)で、住民や関係者向けの説明会が開かれた。

 築50年ほどのすすき野団地は、820戸に約1400人が暮らす。高齢化率は50%近く、独居の高齢者も増えているという。

 事業に取り組むのは、介護事業者などが8月に設立した任意団体「個・孤の時代の人生ケア会議」。

 説明によると、10月下旬以降、住民に対する研修会を3回開き、独居などで家族から支援を受けられない住民の参加を募る。参加者には「アドボケーター」という支援者をつけ、健康なうちから病気になった際に希望する治療やケア、亡くなった後の対応などを聞き取っておく。

 本人の判断力が衰え、入院や施設入所、在宅医療が必要になったときには、アドボケーターが医療機関や介護事業者らと対応して本人の意思決定を支援する。亡くなった際には葬儀会社などとのやり取りも行うという。

 アドボケーター役には社会福祉士や看護師らを想定している。事業を通じて、支援に必要な業務や費用、情報管理の方法、行政に求められる支援などを探る考えだ。

 こうした支援は、これまで介護保険ケアマネジャーらが本来の業務とは別に対応しているケースがあり、負担となっていた。

 高齢化や単身世帯の増加などを背景に、身寄りがない人に対し、入院や入所、入居時の身元保証や、財産管理や生活支援、遺品処理といった死後のサービスなど、介護保険のような従来の公的な仕組みでは規定されていなかったり使いづらかったりするサービスを提供する民間事業者が増えている。しかし、トラブルも続出しているといい、国も実態調査に乗り出し、対策を検討し始めた。

 同会議の代表で、東京都内の身元保証事業者「OAGライフサポート」代表を務める黒沢史津乃さんは、「本人に代わって意思決定をする家族がいない人が増えてきているのに、そこの対応をどうしたらいいかが何も決まっていない。家族が何とかしてくれるというこれまでの前提をなくした状態で、最後まで安心して暮らすにはどんなケアシステムをつくったらいいか考えていきたい」と話す。(土肥修一)

 身元保証代行や生活支援、成年後見、遺品処理のような死亡後の手続きなど、身寄りがない高齢者が必要とする支援やサービスの課題を今後も報じていきます。身近に頼れる人がいなくて困ったこと、こうしたサービスを契約、利用した体験談などを、seikatsu@asahi.comメールするへお寄せください。

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