基金乱立、だぶつく16兆円 5千億円計上→支出5.6億円も
国が根拠の乏しいなかで積み立てた基金がだぶつき、使い残しが16兆円にまで膨らんだ。年4兆円のペースで増え続けている。背景には、コロナ対応などを理由に、時の政権が、毎年「規模ありき」の経済対策を打ち、使い切れないほど規模が大きくなったことがある。似たような事業にあてる基金も乱立している。
「総額の約束果たせ」迫る自民
AI(人工知能)や量子技術など、世界的な覇権争いとなっている先端技術の研究開発を支援するため、「経済安全保障重要技術育成基金」は、岸田政権下でつくられた。市場原理に委ねるのではなく、国の補助金で強力に民間を後押ししようとするものだ。
この基金は2021年度と22年度の補正予算で計5千億円が計上された。ところが、22年度までに支出されたのはわずか5億6600万円。大半は国立研究開発法人に支払われる管理費で、研究そのものに使われたのはゼロだ。
肝心の使い道を後回しにして、総額ありきで事業を決めた政治判断の「ゆがみ」の象徴ともいえる。
「もともと5千億円なんていう規模になるとは思っていなかった」
基金の担当者は打ち明ける。
複数の関係者によると、21年度補正の協議では当初、基金は1千億円とする方向で調整が進んでいた。自民党の重鎮・甘利明前幹事長の右腕として経済安保を推進していた小林鷹之氏が初代の経済安保担当相に就くと状況は一変する。甘利氏らの意向を受けてまとまった党の提言通りの5千億円に、一気に跳ね上がったのだ。
21年度補正には、まず半分の2500億円が盛り込まれた。
補正予算は、想定外の緊急的な経費に限って認められているものだが、21年度どころか22年度になっても、研究の契約を1件も結べなかった。
それにもかかわらず、内閣府は22年度補正で2500億円の追加を求めた。「『総額を5千億円にする約束を早く果たせ』と、自民党から圧力があったため」(幹部)という。
予算を取り仕切る財務省が難…
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- 【視点】
記事を読んで改めて考えさせられました。歴代最長の安倍内閣の間に自民党一強が固まり、官邸主導が進みましたが、その政治力は効率的な国家運営をもたらさず、自民党政権の維持に費やされました。そして、安倍内閣を末期に揺さぶったコロナ禍を機に財政の肥大
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