世代超え女性たちがつなぐバトン ゴールディン氏研究、共感した訳者

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聞き手・岡林佐和
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 男女賃金格差の原因についての包括的な研究で、今年のノーベル経済学賞の受賞が決まった米ハーバード大のクラウディア・ゴールディン教授(77)の著作「なぜ男女の賃金に格差があるのか」は、日本語版が今春、出版された。翻訳を手がけた鹿田昌美さんに、この本が日本に与える示唆について聞いた。

 ――この春、翻訳本が出たばかりのタイミングでの受賞になりました。

 「とてもびっくりしました。この本はゴールディン氏の研究の集大成です。日本で初めて翻訳された著作で、光栄に思います。ゴールディン氏のメッセージが日本のジェンダー平等への大きな道しるべになってほしいという思いで翻訳したので、受賞を機にまた本を手にとってもらい、日本の変化につながったらうれしい」

 ――100年にもわたる米国の女性たちのキャリアと家庭との葛藤を描いた本です。

 「この本では100年間を時代ごとに第1から第5世代まで五つの世代に分け、データとその時代を生きた女性のライフヒストリーを交えながら、それぞれの世代の女性たちにどんな障壁があったのかを明らかにしています」

 「ゴールディン氏は『バトンを渡す』という表現で全体をつないでいます。各世代の女性たちが、それぞれにできることをなし遂げ、次の世代に何らかのバトンを渡してきたというのです。私自身も子育てしながら働く女性の一人ですが、私たちもこういった歴史をつくる一部なんだな、と思えてすごく共感するところがあります」

 「バトンをつないで、時代が進むごとに女性の働く環境はどんどん良くなってきた。キャリアと家庭を両立できる基盤がずいぶん整ってきて、いまを生きる私たち=第5世代へとバトンが渡ってきました。ただし、それでもまだ残っている格差がある。ゴールディン氏は、こんなに制度が進んで人々の認識も変わってきたのに、なぜ男女の賃金格差がまだ残っているのだろうかという点に注目し、原因を探っていきます。100年分の歴史を丁寧に振り返ってきたからこそ解明できる、謎解きのわくわく感があります」

 ――ゴールディン氏は受賞後、「探偵のようにやってきた」と話していました。

 「本にも『次の章では、探偵…

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