「絶対に嫌」「価値観に懸念」…虐待禁止条例改正案に抗議のうねり
埼玉県虐待禁止条例改正案を県議会に提出していた自民党県議団が10日、一転して改正案を取り下げた。子どもを自宅などに置いて一時的に外出することも「虐待」だとして禁止する内容に、県内外から強い批判が相次いだためだ。この日も県内のあちこちで抗議の声が上がった。
改正案の取り下げに、県民には安堵(あんど)の声が広がった。
浦和駅前で小2の男児の孫を連れていたさいたま市の主婦、松原弥生さん(65)は「孫は『友だちと下校できないのは絶対に嫌だ』と言っていた。取り下げは当然」と話す。孫の両親は学校の教員。孫は公設の学童保育に入れず、費用が高い民間の学童に通っているという。「自分の学校の子どもを放り出して帰ってくるわけにはいかない。条例が成立したらとんでもないと思っていた」。
約9万4千人の組合員が加盟する県労働組合連合会は10日午前、「共働き家庭だけでなく、ひとり親家庭では、大多数が条例違反者となってしまう」「私たちがめざす働く環境の改善と逆行する」と反対声明を出していた。宍戸出事務局長は、取り下げについて「『女性は専業主婦として家庭を守る』という旧来型の家族観が透けて見える改正案だった。取り下げは当然だが、今後も同じような価値観で施策が進められないか懸念がある」と話した。
子育てや医療・介護分野の課題などを協議している県社会保障推進協議会も、「子育て世代の事情等が考慮されていない」「子育て世代でない方へも通告、通報義務を課していることで、地域、世代の分断を招く」と撤回を要請。段和志事務局長は「県民の声が大きな意義をもったと考えている。今後は県民本位の政治をしてほしい」とした。
また、オンライン署名も大きなうねりとなった。
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