「数十年のうち、まだほんの初め」 原発処理水2回目放出開始

福島第一原発の処理水問題

西堀岳路 力丸祥子
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 東京電力福島第一原発処理水は2回目の放出が5日、始まった。初めての放出から1カ月あまり。心配された風評被害はみられず、関係者をひと安心させた。ここまでは海水や魚のトリチウム濃度に異常は確認されていないが、放出完了までは数十年かかる。不安を抱えた年月が続く。

 いわき市四倉町の「道の駅よつくら港」で漁期中に毎月1回催される「ホッキまつり」は、処理水放出後の9月23日もにぎわった。地元でとれたてのホッキ貝が市価の3分の1ほどとあって、用意された1千個がこれまでと同様に開始約1時間で完売した。

 道の駅の運営にたずさわる女性は「処理水がいつどうなるかわからないという不安と隣り合わせ。モニタリングや検査の結果は細かくチェックし、売り物の安全を確認しています」と話した。

 市は、「常磐もの」の冷凍切り身や加工品をふるさと納税の返礼品にしている。担当者によると、今年1月~8月21日の寄付状況は1日平均で40件の計約90万円だったが、1回目の放出が始まった8月24日に近い8月22日~9月30日は608件の計約1024万円に跳ね上がった。

 「福島の魚を食べて応援します」といったメッセージがつくこともあるといい、担当者は「全国から応援してもらっていると実感する」。台風13号の水害被害の復旧を寄付金の使途に加えたことなども後押ししているようだ。

 県のまとめによると、県庁の食堂などで福島県産の魚を提供する動きは、13都府県に広がった。その一つ、滋賀県庁の食堂では9月13日から「福島おうえん定食」を数量限定で発売。メヒカリの唐揚げと郷土料理のさんまのポーポー焼きなどがついて税込み800円、10月4日までに約200食が提供された。滋賀県庁の担当者は「こちらでは珍しい魚種と料理だが、おいしくて、ネットでお取り寄せしてみようかと話題になるほどだった」。

 徳島県庁の食堂でも、メヒカリの唐揚げとサバ焼き定食(700円)などが特別メニューなどとして9月11~15日に提供され、計1244食が売れた。担当者は「一般の人も『福島を食べて応援したい』と訪れ、毎日ほぼ売り切れの大好評だった。今後のことは決まっていないが、機会があればぜひ」と話した。

 いわき市漁協によると、水揚げ魚価は放出前と変わらず、マダイの鮮魚で1キロあたり平均600円ほど、ヒラメの活魚で同2400円ほどで、昨年の同じ頃よりやや高値で推移しているという。福島県沖の海水温が高く需要に対して魚影が少ないためらしい。

 県漁連の野崎哲会長は「何十年も放出が続くなかでは、まだ始まったばかり。東電にはずっとミスが起きないよう、1回1回に緊張感をもってほしい。私たちも気を緩めず、チェックを続ける」と話した。(西堀岳路、力丸祥子)

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