子どもの自殺411人で最多水準 「望ましい」はずの詳細調査は少数

上野創
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 文部科学省がまとめた「児童生徒の問題行動・不登校調査」の2022年度の結果によると、小中高校から報告があった自殺者は計411人で、21年度の368人から43人増加した。過去最多水準の415人だった20年度と同様、深刻な状況になっている。

 国公私立の小中高校を対象に調べた。411人の内訳は小学校が19人(前年度8人)、中学校が123人(同109人)、高校が269人(同251人)。いずれも前年度より増えた。

 複数回答可で、自殺した児童生徒の「置かれていた状況」を尋ねたところ、「不明」が255人と最多で、「家庭不和」が43人、「進路問題」が37人、「父母等の叱責(しっせき)」が34人、「友人関係(いじめを除く)」が32人と続いた。「いじめの問題」は小学校が1人、中学が4人。高校はゼロだった。なお、警察庁の調査では、22年度の小中高生の自殺は計485人だった。

 文科省は自殺があった後の対応を都道府県教育委員会に質問している。

 自殺や自殺が疑われる事案を把握したら行うことが決められている「基本調査」は411人全てについて実施されていた。一方、弁護士や心理職ら外部の専門家を加えた委員会などで実施する「詳細調査」は19件、全体の4・6%にとどまった。

 詳細調査をしなかった理由として各教委は、「基本調査で全容が解明できた」「学校生活に起因する要素がないことが確認できた」「遺族が希望しなかった」などを挙げた。

 詳細調査へ移行するかどうかは、文科省の「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」で、「全ての事案について移行することが望ましい」と明記したうえで「基本調査の報告を受けた設置者が判断する」と示されている。

 「詳細調査の制度と、調査の希望の有無について遺族に説明しなかった」件数は全体の約4割を占めた。理由は「基本調査で概要を把握できた」「遺族から精緻(せいち)な調査を希望しないと申し出があった」など。

 詳細調査をめぐっては「制度があることも知らされなかった」と遺族側から改善を求める声が上がっていた。(上野創)

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