生成AI、学校でどう活用? 山口県教委が初研修 生徒と討論も

山野拓郎
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 ChatGPTチャットGPT)などの生成AI(人工知能)を教育現場でどう活用するか。山口県教育委員会が検討を始めた。教員向けに初めて開いた10月の研修会で、生成AIの可能性や課題を話し合った。

 「生成AIは検索エンジンではない。存在しない文章を生成することが目的なんです」

 10月17日、県立防府高校であった研修会。プログラミング教育の推進に取り組むNPO法人「みんなのコード」の永野直さんによる授業を、県内各校から集まった情報科の教員約20人が見つめた。

 生成AIと人間のディベートも行われた。生徒4人がチームを組み、「テレビや新聞は必要か」「校則は必要か」などのテーマでAIと討論した。

 「AIの必要性」についてのディベートでは、「AIを使うことで難しい計算や大量のデータ分析など人間が一人で行うのが困難な作業を手伝ってくれます。これにより、創造的な仕事や深い思考に時間を使うことができます」と主張したAIに対して、生徒が「作業を手伝ってくれますが、全てをAIに任せっきりにしてしまう可能性はありませんか」と指摘すると、AIは「その可能性はありますが、それはAIの問題ではなく、それをどのように使うかによる人間の問題です」と切り返した。

 「投げかけた答えに対して『それは分かりますが』と返してくるので、反論が難しかった」「生成AIの文章は長くて読むのがつらい」。生徒たちから様々な感想が上がった。

 授業後、教員の研究協議で永野さんは、生成AIは間違った情報を示す場合もあると指摘。「子どもたちはウェブ検索で間違った情報があるのは実感しているので、(AIが間違うことは)理解してもらいやすいのではないか」と話した。参加した教員から「視野を広げるために有用だ」「生成AIはあくまでツールの一つ。最終的に生徒の力で解決させる必要があると感じた」との意見が聞かれた。

 教育現場での活用法は、国でも議論が始まったばかりだ。文部科学省は7月、学校で使う際の留意点をまとめた暫定的なガイドライン(指針)を公表。情報活用能力が十分育成されていない段階で生成AIを自由に使わせることは適切でないとした。同省は活用法を試行するパイロット校を指定し、成果と課題を検証する方針だ。

 県内では、岩国市山陽小野田市が市役所の業務で生成AIの導入を決め、県も業務利用の試行をしているが、教育現場での活用は白紙だ。県教委教育情報化推進室の担当者は「まだ文科省のガイドラインも示されたばかり。研修などを通じて教員の指導力を高めていきたい」と話す。

 情報教育に詳しい山口大の中田充教授は「生成AIは現在の教育環境で必須ではないが、10年後の社会状況でAIを全く使わない業種はなくなってくる。使うかどうか判断するには、使ってみて良さや怖さを知る必要がある。判断する基礎知識をつけるために、今後の授業で生成AIに取り組んでいかなければならないと思う」と指摘する。(山野拓郎)

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