第10回AI俳優にだってできない演技はある 哲学者が考える人間の強みとは

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聞き手・加藤勇介

 「AI(人工知能)活用で未来はユートピア(理想郷)になる」という期待の声があれば、「人類はAIに支配されるディストピア(暗黒郷)になる」という嘆きの声も飛び交う。技術の進歩と社会の革新は何度も繰り返されてきたのに、人工知能になるとなぜこうも極端になってしまうのか。「スマホ時代の哲学」などの著書がある京都市立芸術大講師で哲学者の谷川嘉浩さん(33)に聞いた。

 ――AIを議論すると、楽観論と悲観論が悲喜こもごもとなるのはなぜでしょうか?

 「AIは、明確な定義がないにもかかわらず注目を集めている流行語です。だから、インターネットサービスでもロボットでも家電でも、目新しい機能があれば何でもAIだと言われます。AIという概念に何でも詰め込むから、プラスにせよマイナスにせよ過大評価が生まれるんだと思います」

 「楽観論や悲観論が暗に想像しているのは、人間の多様な営みを代替する汎用(はんよう)型のAIですが、まだありません。業界ごとの個別事例に特化した技術を、AIの一言で十把一絡げに恐れるのは粗っぽく見えます」

 ――とはいえ、ChatGPT(チャットGPT)の登場、米ハリウッドでの俳優や脚本家のストライキなどは、AI社会がもう目の前にあることを実感させています。

 「私たちが、出来事を想像力…

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