処理水問題どうみる?原発事故対応で日中協力の架け橋となった経営者

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聞き手・関根慎一

 12年半前の東京電力福島第一原発事故。対応のカギとなる4号機使用済み燃料プールの安定化に一役買ったのが、中国企業から無償提供された巨大なコンクリートポンプ車「大キリン(愛称)」だった。この取り組みの「架け橋」となったエネルギー関連企業「WWB」会長の龍潤生さん(51)に、同原発からの処理水放出で冷え込む両国の関係をどう見るのか、当時の経緯とともに尋ねた。

 ――原発事故では、高所での注水が可能な「大キリン」が活用されました。中国企業から提供されたものだったのですね。

 「中国の大手建機メーカー『三一重工』が提供しました。同社の日本代理店であるWWBの私を含む数人がチームを組んで原発の対応を注視していましたが、高所にある4号機使用済み燃料プールの対策では、ヘリからの散水も十分に機能せず苦労しているようでした。我々のコンクリートポンプ車なら注水できると思い、東電に提案したところ、『すぐに持ってきてほしい』と頼まれたのです」

 ――アームは最長62メートルまで伸びるそうですね。

 「ドイツの顧客から受注生産したもので、輸出に向け上海の港に係留されていました。コンクリートポンプ車は他からも提供があったそうですが、三一重工のポンプ車はアームを長く伸ばせる上に性能面で優れ、4号機プールへ効率的に注水できた。『大キリン』と呼ばれていたそうです」

 「国際赤十字に仲介を依頼し、通常なら必要となる検査や通関などの手続きを省略できました。日中の政府が受け入れに協力してくれたのです。大阪南港に到着した後は、警察車両の先導で原発へ向かいました」

 ――無償提供だったのですか。

 「三一重工の梁穏根会長に相…

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