災害時に暴走する「正義」 外国人犯罪のうわさを許す社会の先入観

有料記事

聞き手・桜井泉
[PR]

 100年前の関東大震災では、「朝鮮人が犯罪を起こす」という根拠のないうわさが流れ、官憲や自警団によって多くの朝鮮人が虐殺されました。ただ、災害時に外国人犯罪のうわさが流れるのは、過去に限ったことではありません。社会学者の郭基煥(カクキファン)・東北学院大学教授は「正義の暴走」の存在を指摘します。

 関東大震災では「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などのうわさが流れ、軍や警察、自警団により多くの朝鮮人が虐殺されました。近年の震災でも、外国人犯罪のうわさは流れました。そのことに日本社会はもっと注意を払うべきです。

 東日本大震災に関連して2016年、仙台市東京都新宿区の住民に「被災地での外国人犯罪のうわさを聞いたことがあるか」と尋ねる調査をしました。仙台では「聞いたことがある」人が過半数に達し、新宿も4割超でした。そのうちうわさを信じた人は仙台、新宿とも85%を超えて大差がなく、驚かされました。

 うわさの内容は略奪・窃盗が最も多く、遺体損壊や性的暴行などもありました。中国系の人を犯人とするものが一番多く、他にも朝鮮・韓国系、東南アジア系など近隣のアジアの人が犯人扱いされていました。

 私は東日本大震災のとき、学生と一緒に津波に襲われた沿岸部に行き、後片付けのボランティアをしていました。そのとき、ボランティアで来ていた別の人たちから外国人犯罪のうわさを聞き、耳を疑いました。

「やつらならやりかねない」と敵視

 とくに「外国人が遺体から指…

この記事は有料記事です。残り1026文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

関東大震災100年

関東大震災100年

文豪や経済人が書き残した記録でたどる関東大震災[もっと見る]