全線再開から1年の秘境路線は今 利用客は1.6倍になったけれど…

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斎藤徹
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 2011年の豪雨災害で一部区間の不通が続いていたJR只見線(福島県会津若松市新潟県魚沼市、全長135・2キロ)は昨年10月、11年ぶりに全線開通した。慢性的な赤字を抱え、一時は廃線も検討されたが、地元住民らの熱意で復活を果たした。(斎藤徹)

 9月下旬の週末、会津若松駅を早朝に出発した2両編成の列車は、会津盆地を抜けると、只見川沿いの山深い峡谷をいくつも抜け、約3時間かけて只見駅に着いた。

 車内は、通学などに使う地元住民のほか、カメラを持った鉄道ファンらでにぎわっていた。コロナ禍が明けてやってきた外国人観光客の姿もあった。

 「再開直後に見られた都心の通勤列車のような混雑はさすがにもうないけれど、落ち着いたという印象はまだもてないですね」。車内で地元特産品などを販売する会社代表の酒井治子さん(42)は話す。

 週末は100人近くが乗車し、只見駅などでは、乗車のために十数人が列をつくる光景が今も見られるという。観光客からは「車窓からの景色を見に来た」「話題になっていたので一度乗ってみたかった」などと声をかけられる。

 「地元の私たちが思っていた以上に、多くの人をひきつける魅力が只見線にはあると実感した」と酒井さんは言う。

 JR東日本が今年7月に公表した、只見線の22年度の平均通過人員(1キロあたりの1日の平均乗客数)は、会津川口―只見間で79人だった。不通になる前の10年度の49人から1・6倍に増えた。

 秋にかけては峡谷の紅葉が見頃を迎え、JR東や会津鉄道が臨時列車を走らせる。来年には、只見線ファンが多いとされる台湾と福島空港を結ぶ定期便も就航予定だ。地元の商工関係者は「只見線のにぎわいは当分続きそうだ」と顔をほころばせる。

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