囲碁AI、こわれる 人間の悪手に翻弄、大石死す AI社会に警鐘

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大出公二

 囲碁AIが初めて人間のトップ棋士を破って7年。その強さはとどまるところを知らず、いまや互角に勝負できる棋士はいなくなった、はずだった。人間があえて放った、ありえない悪手に翻弄(ほんろう)され、敗れたのだ。棋力向上にはまったく役立たない驚異の棋譜を紹介しよう。

 今年2月、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、米国のアマチュア有段者が超人AIと15回対戦し、14勝したと報じた。当地の調査会社が徹底的に調べ上げたAIの弱点を突いたのだという。プロアマ問わず、囲碁に関わる者には衝撃的なニュースだった。

 超人AIのデビューは2016年。韓国の世界ランカー李世乭(イセドル)九段が米グーグル傘下の英ディープマインドが開発した「アルファ碁」に1勝4敗と圧倒されたのだ。3年後に引退した李九段は「自分が1位になったとしても、勝てない存在(AI)がいる」と語った。

 AIは進化を続け、アルファ碁引退後の最強AIとされる中国テンセントの「絶芸」は、トッププロにもイーブンの互先では打たない。二子置かせて打つ。対局サイト「野狐」に「絶芸指導F」の名で常駐し、ハンディをもらうのではなく、ハンディをあげて99%近く勝っている。

手法を絶芸に試すと…

 日本の芝野龍之介二段は、F…

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    佐倉統
    (東京大学大学院教授=科学技術社会論)
    2023年9月25日15時12分 投稿
    【視点】

    AIにも限界はある。そのことを明確に示した興味深い記事。ぼくは囲碁にはまったくの素人なのでそれぞれの手の細かい分析はよくわからないが、おそらく統計的な判断のわずかなズレを衝いた作戦が功を奏したのだと思う。それを発見した芝野二段には、どういう

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    市原麻衣子
    (一橋大学大学院法学研究科教授)
    2023年9月26日10時24分 投稿
    【視点】

    この記事を読んで思い出すのは、2015年の将棋電王戦FINAL第2局で永瀬拓矢六段(当時)が将棋AIのSeleneに勝利した一局だ。Seleneのバグを突いた永瀬さんの一着を受けてSeleneが王手放置で負けるという一局だった。永瀬さんがS

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