ビリー・アイリッシュとネトフリに任せていいのか 気候危機と報道
史上最高の猛暑を記録し、「地球沸騰化」と呼ばれる今、メディアは気候変動をどのように伝えればよいのか。朝日新聞も参加する報道キャンペーン「Covering Climate Now(CCNow)」の創設者のマーク・ハーツガード氏とカイル・ポープ氏が寄稿した。
私たちが見たり、聞いたり、読んだりするものの多くで、気候危機は避けられないものになっている。Netflix(ネットフリックス)では『Don’t Look Up』が数週間にわたり、これまでで最もストリーミングされた映画となった。
ポップスターのビリー・アイリッシュは、カリフォルニアで燃える丘について歌っている。
書店では、気候フィクションは独自のジャンルとなり、温暖化する地球での生活が何を意味するかを痛烈に描いたジェフ・グッデルのノンフィクション『The Heat Will Kill You First』は、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに入り、2カ月目を迎えている。
こうした中でジャーナリズムはどうなっているのだろうか。
史上最も暑い夏を過ごし、山火事や熱帯性暴風雨に見舞われ、海は異常なほど温かくなっているにもかかわらず、ニュースメディアは、ほかのポップカルチャーに負け続けている。不可解なことに、気候変動はほとんどの主要報道機関にとってニッチな関心事のままである。
米国では、この夏の地獄のような天候に関するほとんどのテレビ報道は、「気候変動」という言葉に触れることさえなく、ましてや石油、ガス、石炭の燃焼がその地獄のような天候を引き起こしていることを説明することもなかった。
あまりに多くの報道機関が、気候を専門家によるサイロ化(タコツボ化)された取材分野だと見なし続けている。
もちろん注目すべき例外はある。
たとえば英ガーディアンは…
- 【視点】
2008年、私はテレビ朝日「地球危機2008」という特番の取材でアメリカにいました。当時、アメリカでは中西部を中心にトルネードや大洪水で多くの被害が起きていました。一方、山火事の拡大や長期にわたる干ばつで水不足が深刻になっている州もあり、ア
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