不幸の原因探しをしてしまう50代女性 姜尚中さんはあるがままに
悩みのるつぼ 相談者(50代・女性)
10年ほど前に離婚、6年前に息子が20代半ばで亡くなり、独り暮らしです。その後、ある人と恋愛関係になりました。古くからの友人で、傷ついた私の気持ちを癒やしてくれる貴重な存在でしたが家庭がありました。1年ほど前から連絡が取れなくなり、突然死していたことを、だいぶたってから知りました。
息子の死を受け止められるようになりつつあったのに、かなりのダメージを受けました。仕事も忙しくしていますし、スポーツをやったり趣味を始めたり、気持ちを立て直す努力はしていますが、ふと、つらつらと「さかのぼってくよくよする癖」が直りません。「相手だけあの世に行って私ばかり苦しむのかよ」「そもそも息子が亡くならなければ、不倫なんぞしなかったのではないか?」「私が離婚せず夫婦生活を送れていたら息子は生きていたんじゃないか?」「元夫と結婚しなければよかったのでは?」と、芋づる式に不幸の原因探しをしてしまいます。これをしたところで、何の生産性もないし意味がないことはわかっていますが、やめられないのです。悪癖を断つアドバイスがあったら教えて下さい。
回答者 政治学者・姜尚中さん
あなたの度重なる悲劇を思えば、不幸の原因探しにのめり込むのは決して「悪癖」などではありません。ですから、ことさら「前向きに」とか、「生産的に」とか、人生をポジティヴに生きなければならないという「強迫観念」のような思い込みは棄(す)てることです。あなたは何とか自分の足で立とうと懸命に努力しているのですから。まず、自分を褒めてあげることです。
ジレンマは過去の不幸の「犯人さがし」をやめたいと思いながら、原因さがしにのめり込んでしまう堂々巡りにあるようです。過去は現在という砂時計のくびれを通過して下に落ちてしまった砂のようなものです。それは、神ですら否定出来ない冷厳な事実です。
だからこそ、過去ほど確かな…