TBS、ジャニーズ東山社長に要望書 再発防止策「具体性に欠く」

中沢絢乃
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 故ジャニー喜多川氏の性加害問題でTBSは、ジャニーズ事務所に対し、被害救済や補償、人権侵害の防止に関する具体的な措置を取ることなどを求める要望書を提出した。佐々木卓(たかし)社長が20日の定例会見で明らかにした。同局のコンプライアンス担当役員が13日に事務所を訪れ、東山紀之社長に渡したという。この日の会見で佐々木社長は、事務所が7日の会見で示した再発防止策などの内容を「具体性に欠けていて不十分」と批判した。

 要望書では、被害者への救済、補償や人権侵害の防止策に関する具体的な施策、措置を速やかに決定し、公表すること▽この施策、措置を速やかに実施すること▽施策や措置の実施、進捗(しんちょく)状況について定期的にTBSに報告すること▽ジャニーズ事務所の人権に関する行動指針を速やかに策定し、対外的に宣言、公表することの4点を求めている。

 また佐々木社長は続けて「ジャニーズ事務所に人権の改善を促すため、我々のことも正さなくてはいけない」と、性加害問題に対する過去の報道姿勢にも言及。特に1999年から2000年に週刊文春が喜多川氏による性加害を「セクハラ」などとして取り上げたキャンペーン報道を展開した頃や、04年に、事務所側が起こした名誉毀損(きそん)訴訟で、記事の重要部分を真実と認定した東京高裁判決が確定した頃を挙げながら、佐々木社長は「私たちはニュースでこの問題を取り上げてこなかった」と指摘。「私自身長く記者をしてきて、自分自身の当時を振り返っても、人権意識の乏しさや芸能界のニュースに対する向き合い方を思い出すと、本当に恥ずかしいと思っている」と語った。

 佐々木社長は「男性から男性へのハラスメントが著しい人権侵害だという認識が乏しく、週刊誌が報じた芸能界のニュースを芸能スキャンダルと一くくりに過小評価してしまうという判断ミスがあった」とも語り、「多くの未成年者が被害に遭う中で、報道機関としての役割を十分に果たせなかったことを深く反省し、このことを戒めとして、今後の報道や取り組みに生かしてまいりたい」と述べた。

 今後番組へのジャニーズの所属タレントの起用については、「人権の尊重の改善を促す作業を続けながら、厳しく注視して判断していく」として、現時点では変更しない方針を示した。政府が定めた「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」では「取引停止は最後の手段として検討される」と示されていることに触れ、「そうした最後の手段を取る前に、取引先との関係を維持しながら影響力を行使して改善を要求するなどの段階を踏む。我々のスタンスはそこにある」と話した。

 性加害問題を巡っては、事務所は19日に取締役会を開き、社名変更や藤島ジュリー景子前社長が保有する株式の取り扱いなどを議論したことを公式サイトで発表。「会社運営に関わる大きな方向性について、向かうべき方針を確認した」とも述べ、10月2日に「進捗(しんちょく)内容を具体的に報告する」とした。(中沢絢乃)

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