一夜で1700棟が浸水した街で 温暖化時代の大雨にどう備えるのか

有料記事気候変動を考える

力丸祥子 西堀岳路 大月規義

 台風13号の接近に伴う記録的な大雨から2週間。1人が亡くなり、1700棟以上が床上床下浸水した福島県いわき市ではいまも復旧作業が続く。近年、大雨や短時間の強雨は増加傾向にあり、地球温暖化の影響とされる。身近な河川の氾濫(はんらん)や、いざというときの避難にどう備えるのか。いわきの現場から考える。

 8日夜、いわき市中心部に近い内郷内町の会社員、根本ゆう子さん(74)が異変を感じたのは午後8時ごろ。1階の窓の下から室内にすーっと水が流れ込んで来た。慌てて2階に上がった瞬間、近くの新川からあふれた流木やゴミが玄関やガラスを突き破り、家の壁を引きはがした。瞬く間に1階は2メートルほど浸水。窓から外をみると、近所は川の中に家が建っているような状態だった。「生きた心地がしなかった」

 市南部でも渋川が氾濫。同市植田町中央3丁目にある商店街は、店舗や住宅が床上浸水の被害に遭った。

行政主導のハード整備は限界 

 「もう店をやめるかもしれない」。40年近くスナックを経営する大沢里見さん(81)は翌朝、泥水をかき出す作業に追われながらつぶやいた。前の晩、2階にある自宅部分の窓から周辺があっという間に水につかるのを見た。「雨が急にひどくなり、2時間後には落ち着いた。1階の店舗に下りると50センチくらい水浸しだった」

 福島地方気象台によると、いわき市平や同市山田、南相馬市原町では8日午前9時からの27時間に、9月の平年の降水量に匹敵する200ミリ近い雨が降った。山田ではその7割が、ピーク時の8日夜のわずか3時間に降っていた。

 この雨で、いずれも県が管理…

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