気候変動をどう報じるか メディアに課題、米ジャーナリズム誌編集長

有料記事気候変動を考える

聞き手・ワシントン=望月洋嗣 合田禄
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 これまでにない暑い夏、相次ぐ山火事――。地球規模で続く極端な気象現象をメディアはどう報じるべきか。朝日新聞も加わる気候変動の国際報道キャンペーン「Covering Climate Now(CCNow)」の共同設立者で、米コロンビアジャーナリズム・レビュー編集長を務めるカイル・ポープ氏に聞いた。

 ――CCNowを始めようと考えたのはなぜですか。

 コロンビア・ジャーナリズム・レビューの編集長として、気候変動の重要性に見合う報道がなされていない、と強く感じていました。米誌ネイションの環境専門記者マーク・ハーツガード氏(CCNowの共同設立者)と一緒に記事を書き、問題提起をしましたが、また原状に戻って何も変わらない。

 そこで、気候変動報道が不十分な米国の地方テレビ局などを巻き込もうと考え、(ジョンソン元大統領の報道官で、著名ジャーナリストの)ビル・モイヤーズ氏から最初の資金提供を受けました。そして2019年秋、参加メディアが気候変動を積極的に報じる1週間を設けたのです。

 ――CCNowの現況は。

 急成長し、世界中で500以上のメディアが参加しています。計20億人に情報を伝えることができ、この種のメディア共同体としては世界最大です。ワークショップを開催したり、記事をメディア間で共有することを促したり、環境活動家グレタ・トゥンベリさんやグテーレス国連事務総長ら、重要な人物に共同で取材したりしています。

 記者たちに研修の機会も提供しています。次の段階として(テーマを設けた)共同報道事業も考えています。

「活動家」ではない

 ――いまの気候変動報道をどう見ていますか。

 大きな進展を遂げました。しかし、最近の山火事やハリケーンの報道をみると、(個別の災害報道にとどまり)気候危機と関連付けて報じられていないことが大半です。記者がこうしたニュースを伝える時、より大きな視野でとらえてほしい。

 ただ、私たちは環境活動家としてこの仕事をしているのではありません。ジャーナリストの視点から「問題の全体像を伝えなければ、報道機関としてよい仕事をしているとは言えない」と考えています。

 ――変わってきたと思う点もありますか。

 米国の地方テレビ局の気象予報士が、気象現象と気候変動を関連づけて伝えるようになってきています。私たちは、人々が語る内容に注文をつけているわけではない。ただ、前例のない暴風雨や火災、積雪について放送するとき、化石燃料の燃焼によって引き起こされた気候危機という大きな変化の一部であることを報じてほしい、ということなのです。

いま、アメリカのメディアは

 ――米国の大手メディアの反応はどうでしょうか。

 CCNowを始めた当初は本当に遅れていましたが、より多くの人員を気候変動問題に割くようになっています。

 当時、放送局の幹部と話すと、気候変動を積極的に報じることが視聴者を遠ざけたり、政治的な行為と見られたりすることを懸念していました。特に若者は気候変動をそのような視点では見ていないというデータを示し、幹部らと長時間話し合いました。

 ワシントン・ポストは気候変動報道を先導していますし、英国のガーディアンも優れた模範例を打ち立てました。テレビ局ではCNN、NBCに力のある気候変動担当記者がいます。

記事後半では、いまの時代の記者のあるべき姿、報道機関の内部に存在する問題も指摘します。

 ――専門記者を増やすべきなのでしょうか。

 米国の大手新聞社のほとんど…

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