神宮外苑再開発に「ヘリテージアラート」 イコモス、事業撤回求める

土舘聡一
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 神宮球場秩父宮ラグビー場を建て替える明治神宮外苑地区(東京都)の再開発事業について、ユネスコ国連教育科学文化機関)の諮問機関で文化遺産保護の専門家らでつくる国際NGOイコモス(国際記念物遺跡会議、本部・パリ)が7日、「ヘリテージアラート」を出して事業者に計画撤回を求めた。

 国内組織に当たる日本イコモス国内委員会によると、アラートは危機的状況にある文化遺産を守る目的で出される。文化庁によると、法的拘束力や罰則規定はないという。過去には、昨年、明治期の鉄道開業時の遺構「高輪築堤」(東京都港区)の解体中止を求めて出されたことがある。

 イコモスが公表した文書によると、神宮外苑が市民の寄付や献木などで造られた経緯に触れ、「世界の都市公園の歴史の中でも傑出した例で、優れた文化遺産」と評価。再開発による超高層ビル建設などについて、国民や関係者との協議がなく「強く警告する」とした。

 その上で、事業者に対して再開発の即時撤回を求めた。また、事業を認可した都に対して、都市計画決定の見直しを求めたほか、条例に基づく環境影響評価(アセスメント)に根本的な欠陥があったとして再審の必要性を指摘した。日本政府に対しても協力を求めた。

 事業者側をまとめる三井不動産は取材に「内容を確認中でコメントは致しかねます」、再開発事業を認可した都の担当者は「アラートの文書はまだ手元に届いていない」とした。

 再開発事業は、神宮球場と秩父宮ラグビー場の建て替えや、高さ約200メートルの超高層ビル2棟を新築するなどの内容。三井不動産や宗教法人・明治神宮など4者による事業で、837本を植樹する一方、700本以上の高木を伐採する計画に対し強い批判がある。日本イコモス国内委員会は、環境アセスに問題があるとして指摘を続け、再開発の見直しを求めていた。(土舘聡一)

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