中傷された膵臓がんステージ4 法的措置を動画で訴えたら起きたこと

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前田健汰
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 「詐病」「病気をネタにしている」――。膵臓(すいぞう)がんを宣告されて闘病中の妻と、その夫が配信するユーチューブのチャンネルなどに、心ない誹謗(ひぼう)中傷の書き込みが相次いでいる。「家族に対して、同じ言葉をかけられますか?」。夫婦はこう呼びかける。

 夫婦はこうへいさん(35)とみずきさん(33)。チャンネル「サニージャーニー」を開設し、配信している。登録者数は約23万人いる。

 ともに旅好きな2人は6年ほど前、沖縄・西表島のリゾート地でバイト仲間として出会った。沖縄に移住し、2年前から同地の景色や食を紹介する動画配信を始めた。

 昨年の春ごろからは、主にキャンピングカーで日本一周をする動画を配信。沖縄を出発し、ゴールは北海道。着いたら結婚すると決めていた。

 だが、同年10月。高知県に入ったところで耐えられない腹痛がみずきさんを襲った。

 白目が少し、黄色く濁っていた。病院を受診し、何度目かの検査で膵臓がんと診断された。左鎖骨のリンパ節に転移が見られ、ステージ4。

 旅を中止し、みずきさんの実家がある北海道に居を移した。

「これからの人生、何でもする」

 医師からは治療をしないと4カ月、治療をしても6カ月から2年ほどの余命と告げられた。こうへいさんは「終わりが近いのかもしれない」と頭が真っ白に。そして「これからの人生、みずきのためになることは何でもする」と決め、12月に結婚した。

 一方でみずきさんには「ユーチューブをやめてもいいよ?」と伝えた。負担になると思ったからだ。

 だが、みずきさんの症例は30代という若さやがんの種類の珍しさから情報が少ない。今後同じ病気になった人の役に立ちたいとみずきさん本人が望み、病状や手術結果、病気になって感じたことなどの配信を続けた。

 チャンネルが大事な収入源であり、ユーチューバーを続ければ2人でそばにいやすいことも大きかった。ファンの温かなコメントに励まされてもいた。

 それが一変したのは今年2月。

 夫婦に寄せられた「詐病」などの容赦ない中傷のコメント。2人は投稿者の特定を進め、その旨を自身のユーチューブで報告しました。抑制になればとの思いは、その後裏切られることになります。識者は同様の中傷被害への対策の難しさを指摘します。

「ウソだと思いたいのはこっちだよ」

 別の人気ユーチューバーが…

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