「武装」はがしたステージ ちゃんみなが体現したルッキズムへの抵抗
満員のスタジアムで、アーティストが観客を前にすっぴんになる――。ラッパー、シンガーのちゃんみな(24)が、今春、横浜アリーナで見せたステージは、エンターテインメントの常識を覆す演出だった。音楽がすっかりやみ、客のどよめきの中、メイクをすべて拭い落とす、まるで事故のような数分間。
ルッキズム(外見による差別)に苦しんだ経験から生まれた楽曲のメッセージを、体当たりで表現するパフォーマンスは、YouTubeで300万再生を超える話題になった。
女性の「美」、世間が押しつける規範、盛り上がる女性ラップシーンについて、ちゃんみなに聞いた。
ちゃんみな
1998年生まれ。日本語、韓国語、英語を操るトリリンガルラッパー、シンガー。2017年にメジャーデビューし、昨年から韓国でも活動する。ドラマ「ハヤブサ消防団」(テレビ朝日系)の主題歌「命日」を8月にリリースした。
――今年3月、横浜アリーナ公演で代表曲「美人」を歌うのを中断してメイクを落とすパフォーマンスが話題を呼びました
「ちゃんみな」としての私は、メイクの濃いイメージが強いです。その私が人前でメイクを落とすことで、「美人」という曲の本当の意味を伝えられるのではないかと思いました。
「美人」(2021年)を作ったのは、私自身がルッキズムに苦しめられたからです。2枚目のシングル「Princess」(16年)を出した頃、YouTubeのコメント欄には容姿への中傷がたくさん書かれていました。
生まれたときから音楽は私のそばにあった。小さい頃からアーティストをめざし、デビューまでに何回もオーディションを受けては落ち、次こそはと練習を重ねてきました。
そうして実力をつけ、やっと曲をリリースできた。それなのに、音楽ではなく見た目のことばかりを言われる。ショックで、自分の人生を殺されたようでした。
傷ついた自分のため、楽曲に
――「美人」には、〈あの時言ったよな/You can’t be beautiful〉〈醜いブスが歌ってんじゃないよ〉と、当時の中傷を再現するような歌詞が出てきます
音楽が好きで、まっすぐにがんばってきた幼少期の自分のためにも、容姿への中傷は流せなかった。許せなかったんです。
デビュー当時は、街を歩いていても見た目について人にとやかく言われることがあり、それがストレスで休日は家から出なくなりました。
ミュージックビデオには、私が首をつる刺激的な演出も含まれています。当時の私は、自分の命を捨てようと思うほどルッキズムに苦しめられていました。
でも、悲しみや怒りをSNS…
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