唯一残った映画館、来春取り壊しへ 福岡・中洲の「大洋映画劇場」

豊島鉄博
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 福岡市博多区の繁華街・中洲に唯一残る映画館「大洋映画劇場」は1日、建物の老朽化に伴い、来年3月末で営業を終え、建物を取り壊すと発表した。再開については「現時点は未定」という。

 同劇場は1946年4月に開館。4スクリーンに計581席が備わり、市内の独立系映画館では最古の歴史を誇る。

 運営会社の岡部章蔵社長(72)によると、建設業だった祖父重蔵さん(故人)が木造で建設し、52年に現在の鉄筋コンクリート4階建てのビルになった。

 「中洲も焼け野原だった終戦直後。博多の人たちの笑顔を見たいと思い、作ったそうです」

 最初に上映したのはチャプリンの「黄金狂時代」。開館から数年間は汽車に乗って東京までフィルムを調達したという。77年の間に、およそ1万本の映画を上映した。最多動員を記録した作品は「E.T.」(82年)で、半年間で16万3千人余りが足を運んだ。

 岡部さんによると、ピーク時は中洲に20近くの映画館が軒を並べたが、周辺にシネマコンプレックスが進出し、次々に閉館した。

 近年、ネットフリックスなどの動画配信サービスも定着した。「祖父が建ててくれた映画館を取り壊すのは残念だが、時代の流れかな」と岡部さん。「可能であれば続けたい」といい、可否を検討するという。

 高校生の頃から利用しているという石橋善博さん(76)=同市西区=は「えっ、取り壊すの」と驚きの表情。この日公開された山田洋次監督の最新作を鑑賞後、「ここでしか感じられない味わいがあるので寂しい。取り壊すまでにもっと通わないとな」と話した。(豊島鉄博)

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