朝鮮人虐殺「公文書は存在」 専門家指摘「政府は過去を避けている」

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三井新 江戸川夏樹
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 関東大震災直後の朝鮮人らの虐殺について「記録が見当たらない」との立場をとる日本政府に対し、専門家は「虐殺があったことは周知の事実」と指摘する。

 田中正敬・専修大教授(朝鮮近代史)は「虐殺を示す公文書は存在している」と強調する。国立国会図書館国立公文書館などに保管されているという。

 田中教授によると、当時、根拠がないまま「朝鮮人が放火している」などの流言が広がり、内務省は取り締まりを強化するよう全国に通知。取り締まりの中で亀戸警察署で朝鮮人を刺殺したとの文書が残っている。このほか、内閣総理大臣名で「民衆が朝鮮人に迫害を加えるようなことは(中略)諸外国に報じられて決して好ましきことにあらず」などとする文書もある。

 田中教授は「こうした文書を出さなければならない事態に陥るほど虐殺は各地に広がった」とみる。

 さらに朝鮮総督府警務局の報告書では、朝鮮人の遺体について身元がわからないように始末した状況も記される。

 ただ、松野博一官房長官は8…

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    西岡研介
    (ノンフィクションライター)
    2023年9月2日10時20分 投稿
    【視点】

    彼らは果たして、何を? 守りたいのか。史実を直視し、それに向き合わないという自らの歪んだ態度が、今も社会に蔓延る差別的、排外主義的な風潮を助長していることが、本当に分からないのか。さらに言えば、自らが選択した「過去から目を背ける」という決断

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    江川紹子
    (ジャーナリスト・神奈川大学特任教授)
    2023年9月2日11時9分 投稿
    【視点】

    日本は事実に対して誠実かつオープンである――いつもに増して、国際社会に向かってそのように強調し、共感を得なければならない時に、それに逆行する松野官房長官の発言には、心から落胆する。  処理水の海洋放出と関東大震災での朝鮮人虐殺では、テーマ

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