武雄温泉―新鳥栖の新幹線フル規格整備、慎重な知事「負担を考えて」

寿柳聡
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 9月23日に開業1周年を迎える西九州新幹線(武雄温泉―長崎)の効果について、佐賀県の山口祥義知事は「コロナ禍の中でのスタートだったが、武雄や嬉野に長崎からのお客が増えた」などと評価した。

 一方で焦点となっているのが、武雄温泉―新鳥栖の今後の整備のあり方だ。

 武雄温泉―新鳥栖を巡っては今年2月、国土交通省と県の「幅広い協議」が1年ぶりに開かれて以降、目立った動きがない。山口知事は25日の定例記者会見で、この区間のフル規格での整備について「県の負担は財政だけでも1千数百億円。ほとんどほかに(事業が)何もできなくなる」「大きなリスクを冒してまで我々から打開していく話ではない」と述べ、改めて慎重な姿勢をみせた。

 長崎県側には、武雄温泉―新鳥栖のフル規格での早期整備を望む声が根強い。

 山口知事は「隣人だから、互いが考えていることに対して耳を傾けてほしい。(佐賀も)長崎さんのことを思ってやっているところが多い」と説明。特急が走っていた曲線続きの有明海沿いではないルートが選ばれたこともあり、新大村駅が開設されて長崎空港の利便性が向上したほか、長崎―博多の所要時間が約30分短縮されたといったメリットを長崎側は得られていると指摘した。

 その陰で、新幹線ルートから外れて並行在来線となった佐賀県内の鹿島市太良町では交通の利便性が損なわれていることなどを挙げ、「もっと速く、という気持ちは分かるが、(佐賀側の負担について)長崎県のみなさんは考えてほしい」と理解を求めた。(寿柳聡)

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