第1回「もうギブアップ」 増える荷物、増えぬ日当 アマゾン配達員の現実
インターネット通販の市場規模の拡大が止まらない。経済産業省によると、衣類や食品、家電製品などの「物販」は2013年に5兆9931億円だったのが、2020年には倍の12兆2333億円になった。私たちの「ポチッと」のむこうで、配達の現場はどうなっているのだろうか。坂の街・長崎で、アマゾンの荷物を配達する男性に同行した。
7月の朝、夏の日差しが照りつける長崎市近郊で、大瀧孝洋さん(51)は軽貨物車で走り出した。2021年から個人事業主としてアマゾンの2次下請けの運送会社と業務委託契約を結び、商品の配達をしている。
手にするスマホにはアマゾンが提供するアプリが入っていて、配達先を示すピンがびっしりと並ぶ。この日は、ほとんど行ったことのない地域が割り当てられ、午前中だけで96軒に132個の荷物を配達することになっていた。細かく住所を調べながら配達するため、なかなか荷物は減らない。常に小走りで、坂道を上り下りするため、汗が噴き出してくる。
午後2時半になっても、荷物はまだ20個ほど残っている。充電しながら使っていたスマホも、アプリの消費電力に追いつかず電源が落ちてしまった。ついに大瀧さんは運送業者の事務所に電話をかけ、伝えた。「もうギブアップばい」。荷物は、午後の配達に回してもらった。この仕事に就いて、初めて配りきれなかった。
配達員の日当と荷物の個数から1個あたりの報酬を計算すると、驚きの数字が出てきました。坂の街、長崎で、アマゾン配達員に同行しました。
大瀧さんが働き始めた21年…
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