「それで逃げたら毎回逃げないと」 公式語り部が不適切発言、町謝罪

東野真和

 東日本大震災当時の状況の説明をする岩手県大槌町主催の語り部イベントで、伝承を担う語り部の担当者が大津波が予想されても避難しなくて当然のような発言をしていたことがわかった。町は21日、発言が不適切だと判断し、参加者からの情報で問題視した町議会に謝罪した。

 語り部の催しは、今月13~15日、旧役場庁舎跡地で町主催としては初めて行われた。町協働地域づくり推進課で震災伝承を担当する地域おこし協力隊員が数回、各30分ほど行った。

 旧庁舎は震災当時、揺れが続いて危険な状態だったため、当時の町長は庁舎前広場に災害対策本部を設置。その後、津波に襲われ、庁舎周辺だけでも町長や職員計28人が犠牲になった。防災計画では庁舎が使用に耐えられなくなった場合、高台の公民館に避難して対策本部を設置することになっており、庁舎付近は想定浸水域内だった。

 しかし、協力隊員は13日の説明で、気象庁が地震直後に津波の高さを3メートルと予想したことを説明した後、「防潮堤が6・4メートルで結構高い。3メートルの津波が予想されますと言われたらどう思われます? 逃げるという考えは?」と聴衆に質問。1人が「最初はない」と答えると、「最初はそうですね。それで逃げるようだったら毎回逃げないといけない」などと発言した。

 気象庁は震災当時、最初の地震から3分後に大津波警報を発令、大槌消防署は避難を呼びかけていた。津波の高さの予想は当初3メートルとされたが、その後、10メートル以上に変更された。語り部の担当者は、それらの説明はしなかった。

 また、町が2014年と17年にまとめた震災検証報告書ではいずれも、組織としての危機意識の欠如を指摘しているが、その担当者は「身の危険を感じながら、災害対策本部を作るというのはいろんな人を助けようとするための動きでもある」「動きとしては間違って、そこの考えは間違っていないですし、その中で逃げることはできなかった」などと持論を語った。

 島村亜紀子町防災・協働地域づくり担当参与は「語り部の内容に、検証や調査で事実確認ができていないのに想像や思い込みで話した部分が多々見られた。申し訳ない」と、21日に小松則明議長らに謝罪した。(東野真和)…

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