プレミアムフライデー、サイトが閉鎖 岸田首相も「3時に退庁」宣言

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岩沢志気

 「プレミアムフライデー(プレ金)」を覚えていますか?

 プレ金は、月末の金曜日に早く仕事を切り上げて買い物や食事などを楽しもうという官民を挙げての消費喚起策で、2017年にスタート。その情報を発信する推進協議会のサイトについて、経済産業省は9日、6月に閉鎖していたと発表した。

 どうして閉鎖し、なぜこのタイミングでの発表に至ったのか――。

 プレ金は月末の金曜日、仕事を午後3時に終えて「働き方改革」を進めつつ、消費拡大にもつなげようという取り組みだ。16年12月に経産省や経団連、小売りや旅行などの業界団体でつくる「プレミアムフライデー推進協議会」が翌17年2月に始めることを決めた。

 主導する経産省は、広告費などとして、16年度の補正予算に2億円を計上する力の入れようだった。

首相も発言、外相だった岸田氏も

 官民挙げての狂騒ぶりは時の首相らの発言にも裏打ちされている。

 「政府もできる限り多くの職員が楽しめるよう工夫したい」

 当時の安倍晋三首相は17年2月の経済財政諮問会議で国家公務員にも早帰りを促す方針を示した。

 当時の岸田文雄外相も負けてはいない。17年2月24日、プレ金当日の記者会見で「すでに外務省の省員の皆さんには業務に支障がない限り、できるだけ早く退庁するよう促している。私自身も(午後)3時をめどにできるだけ早く退庁し、英気を養いたいと思っている」と発言していた。

 この施策に強く反応したのは、小売りや外食などの業界だ。

 居酒屋は開店時間を早め、百貨店はプレ金にかこつけた特別商品を販売した。大阪市内を観光するクルーズ船の運航会社は、名刺を出せば大人3千円の乗船料を無料にする企画を開催。全国各地でプレ金をテーマにしたイベントが開かれた。

 働き方改革をアピールしたい大手企業を中心に、社員に午後3時の早期退勤を促すなどの動きが活発化した。

「どういう人が帰れるのか」

 一方で、恩恵を受けられる人は限られているとの指摘は当時からあがっていた。

 当時の取材では、街行く人たちから「金曜は一番忙しい。どういう人が帰れるのか」といった声が多くあがった。

 プレ金の認知度は時間がたつにつれて広がったが、だんだんと機運はしぼんでいった。

 スタートから1年たったころには、プレ金のサービスを縮小する動きも相次いだ。プレ金を意識したプランを約2カ月でやめた大手旅行会社もあった。

 大阪市内のホテルは、バーでの飲み放題などを組み合わせてプレ金専用の宿泊プランをつくったが、17年末に打ち切った。申し込みは一件も無かったという。

 開始から1年たった当時の世耕弘成経産相は「粘り強く何年も続け、中小企業にも地方にも浸透させることが重要」と語っていた。

 そうこうする中でも、企業の取り組みを発信する推進協議会のサイトは運営が続いてきたという。

■「来てくださいとは……」…

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この記事を書いた人
岩沢志気
経済部|消費・流通担当キャップ
専門・関心分野
食、エンタメ、流通、エネルギー