DV元夫側に住所情報 被害者に責任問われた町の主張が波紋

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阪田隼人
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 ドメスティックバイオレンス(DV)の被害者を守るため、自治体が加害者側の追跡を阻む仕組みがある。来年で創設20年となるDV等支援措置だ。被害者が安心して新生活を送るために欠かせない制度だが、裁判の行方によっては根幹を揺るがしかねない訴訟が高松地裁で争われている。

 支援措置は2004年、国が住民基本台帳の事務処理要領を改正して始まった。

 所管する総務省はホームページでこう説明する。

 《配偶者からの暴力、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の方については(中略)「支援対象者」となることにより、加害者からの住民票の写し等の交付の請求・申出があっても、これを制限する(拒否する)措置が講じられます》

 総務省は18年、加害者の代理人弁護士からの請求にも同様の対応をするよう自治体に通知した。弁護士が訴訟手続きのために住所情報を求めることは日常的にあり、自治体が反射的に交付し「支援対象者」の転居先情報が加害者側に漏れる事案が相次いだからだ。

 それから約3年が経った21年2月、香川県三木町から対象者と認められた40代女性は、自分の住民票記載住所などが載った戸籍付票の写しが、同町役場を通じて元夫側に交付されたことを職員からの電話で知った。前年にも同様に元夫側に交付され、指摘をしたばかりだった。

DV被害女性の住所情報漏洩をめぐる訴訟で、町は情報漏出を認めながらも法的責任は否定しました。 町の主張が通れば、国の被害者保護制度が揺らぎかねない、との懸念が広がっています。

 同居していた頃、女性と長男は元夫から暴言を吐かれ、暴力を受けてきたという。離婚後も車で追走されることが続き、相談した警察で勧められたのが支援措置の利用だった。女性と長男が対象者と認められた。

町の担当者、確認不足は認める

 2度にわたる元夫側への情報漏出に、町の担当者は確認不足を認め「今後は厳格に文書審査をおこなう」と文書で釈明した。

 町の資料から、情報を請求したのは弁護士で、申請書には依頼主の元夫の名前は記されておらず、利用目的は訴訟手続きと記載されていたことが分かった。一方、町のシステム端末には、支援対象者の情報であるという警告メッセージが表示されていた。

 「元夫が現れるのではないかという恐怖で、安心して暮らせない。あってはならないミスが2回もあったのに、再発防止策も示さず町の対応は鈍い。私だけの問題ではすまない」

 女性は昨年8月、総務省の通知などを根拠に、「町には依頼主が誰かを確認すべき注意義務があった」として、過失責任を問う損害賠償請求訴訟を起こした。

 町の担当者が確認不足を認めていたことから、女性側代理人は主に損害の有無や程度を争うことになると考えていた。だが、訴訟での町側の主張は予想に反するものだった。

 町側は住所情報の交付請求の…

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