手術受けずとも性別変更 女性から男性へ 裁判官により分かれる判断

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熊井洋美 後藤一也
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 戸籍上の性別を変更する際に求められる要件の解釈をめぐり、家庭裁判所の裁判官によって判断が分かれているケースがあることがわかった。女性から男性に性別変更する際に、閉経していれば、手術を経なくても認められたケースが少なくとも3例あり、そのうち1例はいったん棄却されていた。専門家からは「公平性の観点から問題がある」との声が出ている。

 司法統計によると、2004年施行の性同一性障害特例法にもとづき、性別を変更した人は20年末までに1万人を超えた。性別変更には、①18歳以上②婚姻をしていない③未成年の子がいない④生殖腺がない、または生殖腺の機能を永続的に欠く状態にある⑤変更後の性別の性器に近い外観を備えている――の5要件を満たす必要がある。

 ④⑤は「手術要件」とも呼ばれ、関連学会の治療指針などでは、④について卵巣や精巣を摘出する手術を前提としている。一方、手術していなくても病気の治療で卵巣が機能しない状態になった場合は④に該当するとの解釈もある。

 3例は、GID(性同一性障害)学会の研究大会で3月、性別変更の際に必要となる診断書の作成にあたるジェンダークリニックの医師が、自ら作成にかかわった事例として発表した。

 それによると、3人はいずれも出生時の性別は女性で、自認する性別は男性。当時50代で閉経を迎えており、「生殖機能が失われた」として、20~22年に性別適合手術はせずに、それぞれ居住地の家裁に請求した。その結果、2人は認められ、1人は棄却された。

 棄却の理由は「閉経しているとしても、卵巣や子宮が残存していることから、生殖腺がない又(また)は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあるものということはできない」などとされた。

 ⑤についても、女性から男性に性別変更する場合、手術しなくても男性ホルモンを使い続けることで女性器が男性器に近い外観になるとみなす考え方がある。だが、棄却されたケースでは、男性の外観に近づける手術を受けていないことなどを理由に認められなかった。

 その後、転居した居住地の家庭裁判所で再請求。性別変更が認められたという。認められた詳細な理由は示されなかった。最初に認められた2人も同様に理由は示されていない。

 性別変更の申請にあたり、診断書を書いた医師は「現行法の下では、若い人が性別変更を希望する場合、性別適合手術の実施が基本だと理解している」とし、「特例法からは、性別適合手術を経なければ手続きができないように受け取れるが、法律の専門家である裁判官は、その独立性にもとづいた結果、異なった判断がなされていると感じた」という。

 立命館大の二宮周平名誉教授…

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