第2回ドストエフスキー解釈に潜む「相互誤解」 ロシアと西欧の複雑な関係

 前回は、ロシアの文豪ドストエフスキーの研究者の斎須直人(さいすなおひと)さんに、ロシアの暮らしや文学から見える西欧との違いについて聞きました。今回は、ロシア人という民族に対するヘイトについて、また、文化研究者の役割について考えを聞きました。

【連載】知るロシア/ウクライナ 私が見たその姿

侵攻したロシア。領土奪還を目指すウクライナ。1年半がたっても戦争終結への道筋が見えないなか、両国の国民や文化、芸術と長年関わってきた人たちは何を考えるのか。それぞれの角度から語ってもらいます。

 ――ヘイトに近づかないようにするためには、どうすればよいのでしょうか。

 「議論や意見表明の場で、自分が指したい対象の範囲を具体的に示し続けることが重要ではないでしょうか。例えば、『ロシア』ではなく『プーチン政権』と言ったり記したりする、などです。『ウクライナ国民』や『ロシア国民』、『民族としてのロシア人』や『民族としてのウクライナ人』などを明確に区別せず、その両方を『ウクライナ人』『ロシア人』と言って、混同している例も見ました。これでは、ウクライナとロシアに住む人々の置かれている複雑な現状を、正しく理解することはできないでしょう」

 「ロシアの侵攻後、世界の言論空間で、ウクライナとロシアのナラティブ(物語)がせめぎ合い、『戦争』が起きている、という認識を持っている人は少なくないと思います。ロシア政府が偽情報を含む露骨なプロパガンダを行っている以上、それに対抗すべきだと考えるのは自然でしょう。しかし、なんのジレンマを感じることなく『ナラティブ合戦』に参戦するのは、危ういとも感じます」

「一面的な理解」 なぜ起きるのか

 ――普通の人びとの考え方を知り、その多様性に触れるには、どうすればよいでしょうか。

 「戦争が始まって以降、ひと…

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